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エリオットは神官の青い制服から対魔物用の素材で作られた上着に着替え、すぐに神殿から出て街の西にあるウツボ通りを目指した。
ウツボ通りは傭兵の仲介所を中心として武具を扱う店舗や娯楽施設が建ち並び、いかにも荒々しく物騒な装いの者達が往来するためか、ネジュアでも治安が悪いとされている。
実際、武力に訴えて騒ぎを起こす輩もいるため、治安が悪いというのはあながち間違ってはいないが、武装した者の往来がほかの区域より激しいため、その分警備の目は厳しく、歓楽街に比べると犯罪率は低いほうだ。
エリオットは傭兵仲介所の前に着く。
開け放たれたままの鉄製の重い扉は新しい訪問者を歓迎するが、くぐった先には人だかりができており、受付窓口が見えないほどだった。
五年前から魔物やそれに便乗した犯罪集団が蔓延るようになってから傭兵の仕事が増え、ネジュアのような都市の仲介所は普段から混み合っているが、尋常ではないほど窓口に人が集中している。
エリオットは少し待ってみたものの、窓口の前はざわつくばかりで誰も一歩も動いていなかった。
(何かあったのかな)
壁伝いに移動してみると、人が集中しているのは窓口の周囲だけだという事が分かる。
側面に回ると比較的人がおらず、エリオットは依頼が貼り出されている掲示板に向かうがてら、何があったのかと横目で窓口のあたりを見た。
「巫女だから何だっていうの! あたしだって戦えるんだから!」
若い女性の声がざわめきの中、微かに聞こえた。
(巫女?)
聞き間違いかもしれないが、巫女、となると神殿に所属するエリオットは他人事ではない話なのではと振り返った。
巫女は神殿に仕える神官の一種であり、それで傭兵の仕事を断られるのならエリオットもまた該当するはずなのだから。
エリオットは窓口の周りにたかる人の間を潜り抜ける。
窓口に立つのは、長い付けまつ毛に艶やかな発色の良い薔薇色の唇、髪一本もない光頭に筋骨隆々の肉体美を持つ高身長の男性。仲介所の受付担当職員チェルシー・グロック。
そして窓口の前には、ミルクティーのような柔らかい茶色の波がかった長髪の少女が机に手を付き、小動物を思わせる栗色のくるくると愛らしい瞳でチェルシーに噛み付くように睨んでいる。
少女の服装は肩を出した膝上までの短いワンピースで、薄桃色の大きな布を腰に巻き、後ろで大きなリボンを作っているのが特徴的だった。
形状は巫女の正規の制服ではないようだったが、白く滑らかな質感を持つ布は神職が身に着ける聖霊絹で、裾に入る青い模様はフェアリィナ神を祀る神殿でよく見られるエリオットにとっても馴染みのある模様である。
少女が巫女というのは聞き間違いではないと確信して、エリオットはチェルシーに声を掛けた。
「チェルシーさん、どういう事ですか」
チェルシーは視線を少女からエリオットに移す。
「あ、あらぁ。エリオットちゃんじゃないの……」
チェルシーは気まずそうな作り笑いを浮かべる。
「ごめんなさいね、今ちょっと立て込んでて。先に依頼書を見ててくれるかしら?」
チェルシーは窓口から出て来て、エリオットの両肩を押して人混みから離そうとする。
「えっ」
「ちょっとっ!あたしの手続きは?!」
少女は小動物のような可愛らしい見た目でありながら、苛烈に責め立てる。
「ごめんなさい、エリオットちゃん。ちょっと訳アリなのよ……」
チェルシーは長身を屈めて、こそっとエリオットに耳打ちした。
そうして、このままでは埒が明かないと判断したチェルシーは、真っ赤なネイルを施した大きな手のひらを上げて叩き、声を張り上げて言った。
「はいはい! アンタたちも野次馬してないで、依頼でも探しておきなさい! 暇人なのかしら?! マシュー! 私がお嬢ちゃんの相手をするから、アンタが代わりに受付けしときなさい!」
チェルシーの言葉に、ぞろぞろと人だかりは動き始める。
「ひとまずねぇ、お嬢ちゃんの事情はマスターと相談する必要があるから、事務所まで来てくれる?」
少女は納得していないように眉間に皺を寄せていたが「わかった」と返事をして、チェルシーの案内で受け付けの部屋の奥へと入って行った。
エリオットはどんな問題があったのか、巫女である少女の事が気になりつつも気を取り直して掲示板にある依頼書を手に、チェルシーの代わりとして忙しなく傭兵達の手続きを行うマシュー・ポールトンが立つ窓口へと並んだ。
ウツボ通りは傭兵の仲介所を中心として武具を扱う店舗や娯楽施設が建ち並び、いかにも荒々しく物騒な装いの者達が往来するためか、ネジュアでも治安が悪いとされている。
実際、武力に訴えて騒ぎを起こす輩もいるため、治安が悪いというのはあながち間違ってはいないが、武装した者の往来がほかの区域より激しいため、その分警備の目は厳しく、歓楽街に比べると犯罪率は低いほうだ。
エリオットは傭兵仲介所の前に着く。
開け放たれたままの鉄製の重い扉は新しい訪問者を歓迎するが、くぐった先には人だかりができており、受付窓口が見えないほどだった。
五年前から魔物やそれに便乗した犯罪集団が蔓延るようになってから傭兵の仕事が増え、ネジュアのような都市の仲介所は普段から混み合っているが、尋常ではないほど窓口に人が集中している。
エリオットは少し待ってみたものの、窓口の前はざわつくばかりで誰も一歩も動いていなかった。
(何かあったのかな)
壁伝いに移動してみると、人が集中しているのは窓口の周囲だけだという事が分かる。
側面に回ると比較的人がおらず、エリオットは依頼が貼り出されている掲示板に向かうがてら、何があったのかと横目で窓口のあたりを見た。
「巫女だから何だっていうの! あたしだって戦えるんだから!」
若い女性の声がざわめきの中、微かに聞こえた。
(巫女?)
聞き間違いかもしれないが、巫女、となると神殿に所属するエリオットは他人事ではない話なのではと振り返った。
巫女は神殿に仕える神官の一種であり、それで傭兵の仕事を断られるのならエリオットもまた該当するはずなのだから。
エリオットは窓口の周りにたかる人の間を潜り抜ける。
窓口に立つのは、長い付けまつ毛に艶やかな発色の良い薔薇色の唇、髪一本もない光頭に筋骨隆々の肉体美を持つ高身長の男性。仲介所の受付担当職員チェルシー・グロック。
そして窓口の前には、ミルクティーのような柔らかい茶色の波がかった長髪の少女が机に手を付き、小動物を思わせる栗色のくるくると愛らしい瞳でチェルシーに噛み付くように睨んでいる。
少女の服装は肩を出した膝上までの短いワンピースで、薄桃色の大きな布を腰に巻き、後ろで大きなリボンを作っているのが特徴的だった。
形状は巫女の正規の制服ではないようだったが、白く滑らかな質感を持つ布は神職が身に着ける聖霊絹で、裾に入る青い模様はフェアリィナ神を祀る神殿でよく見られるエリオットにとっても馴染みのある模様である。
少女が巫女というのは聞き間違いではないと確信して、エリオットはチェルシーに声を掛けた。
「チェルシーさん、どういう事ですか」
チェルシーは視線を少女からエリオットに移す。
「あ、あらぁ。エリオットちゃんじゃないの……」
チェルシーは気まずそうな作り笑いを浮かべる。
「ごめんなさいね、今ちょっと立て込んでて。先に依頼書を見ててくれるかしら?」
チェルシーは窓口から出て来て、エリオットの両肩を押して人混みから離そうとする。
「えっ」
「ちょっとっ!あたしの手続きは?!」
少女は小動物のような可愛らしい見た目でありながら、苛烈に責め立てる。
「ごめんなさい、エリオットちゃん。ちょっと訳アリなのよ……」
チェルシーは長身を屈めて、こそっとエリオットに耳打ちした。
そうして、このままでは埒が明かないと判断したチェルシーは、真っ赤なネイルを施した大きな手のひらを上げて叩き、声を張り上げて言った。
「はいはい! アンタたちも野次馬してないで、依頼でも探しておきなさい! 暇人なのかしら?! マシュー! 私がお嬢ちゃんの相手をするから、アンタが代わりに受付けしときなさい!」
チェルシーの言葉に、ぞろぞろと人だかりは動き始める。
「ひとまずねぇ、お嬢ちゃんの事情はマスターと相談する必要があるから、事務所まで来てくれる?」
少女は納得していないように眉間に皺を寄せていたが「わかった」と返事をして、チェルシーの案内で受け付けの部屋の奥へと入って行った。
エリオットはどんな問題があったのか、巫女である少女の事が気になりつつも気を取り直して掲示板にある依頼書を手に、チェルシーの代わりとして忙しなく傭兵達の手続きを行うマシュー・ポールトンが立つ窓口へと並んだ。
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5月2日更新予定
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えっ!神官と傭兵は兼業ダメなのぉ?!🥺
なエリオット君でしたが、何やら事情があるようで…?
ちなみに、チェルシーさんは仮名で男の人だけど見た目は女性っぽいというか女性っぽくはないけど口調とか仕草が所々女性っぽいというか。そんな人です。
オネェとかそういう雰囲気で作ったキャラです(リスペクトで)
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