2026-04-18

Dark Hunter / 第一幕〈3〉

Comment ShareLink
[ON]にすると字下げがなくなり行間が広がります
 ダイディヴィス三大都市のひとつ、漁港都市ネジュアにあるフェアリィナ大神殿。
 フェアリィナ大神殿は水を司る精霊神フェアリィナを祀っており、ネジュア周辺を守る抗魔結界を展開する巨大な結界石を管理している重要施設である。
 ここでは祈祷や冠婚葬祭のみならず、精霊術による治療を行う診療・療養施設としても機能している。

 エリオットは五年前のテロウ村襲撃事件から大神殿の司祭を務める叔父サードに引き取られ、大神殿に併設された寮に暮らしている。
 事件の後すぐ、エリオットは父の形見の拳銃を手にファズガル教団への復讐を考えていたが、思い詰めたエリオットを案じた叔父は神学校に通わせ、かつての父エルドと同じように神官として働く事を勧めた。
 しかし、エリオットは変わらずファズガル教団への復讐とテロウ村の人々が生存している希望を捨てる事は無く、神殿で神官見習いとして勤めながらも、魔物の討伐に特化した傭兵ダークハンターとしての活動を始めた。


 ファズガル教団が各地の抗魔結界を破壊した影響で人里近くにまで魔物が出没するようになってから、年々神殿は忙しさを増していた。
 ダークハンターとしての一歩を踏み出したエリオットではあったが、神殿の忙しさの中、見習いとはいえ神官としての仕事を捨てる身勝手さは持てずにいた。

 神官達が忙しく神殿と病棟を忙しく行き交う中、誰かがエリオットの肩を優しく叩き、エリオットは振り返る。
 墨色の澄んだ瞳と特徴的な長い深緑の髪を腰のあたりで束ねた女性。神殿の先輩である巫女のドリス・ワーグナーだ。

「エリオット、また遠慮しているでしょう。あなたの悪い癖ですよ」

 そう言って笑う目元は幼い子供を見るように優しかった。
 彼女は幼い頃に病で親を亡くしてからサードに引き取られており、同様に故郷を失いサードに引き取られたエリオットにとっては姉のような存在だ。

「いや、こんなに忙しいのに俺が途中で抜けるのは良くないなって……」

 二人が静止する間も、周囲の神官達は変わらず忙しなく行き交う。

「今日は一人くらい抜けても平気です。必要なら私も引き留めますから、遠慮しないでいいんですよ」
 ほらほら、と、ドリスは寮へ続く扉へ向けてエリオットの背を押す。

「ダークハンターがいなければ、魔物の被害は増える一方ですから。そちらを優先してください」
「……うん。ありがとう、ドリスさん」
 エリオットは首だけ振り返って礼を言う。

 いつもドリスはエリオットの一番の理解者だった。
 ダークハンターの免許を取ると言い出したエリオットに猛反対した叔父を、ダークハンターが戦ってくれなければ神殿で祈祷や治療を行うどころではなくなる、と説得してのけたのも彼女であった。

 背を押していた手を離して、ドリスは微笑む。
「ダークハンターとしての活躍、期待していますからね」
 エリオットは頷いて、ドリスと扉の前で別れた。
次のページ:第一幕〈4〉≫
4月25日更新予定
ADスペース

🐦‍⬛からすの後書きコーナー

自分の作る物語のクセとして「主人公の周りにはスーパーマンがたくさんいるのに主人公だけヘタレ」なパターンが多い気がします。
エリオくん、前回は石碑の前で誓いを立てたけど、どっか抜けてる。みたいな。
誓ったなら物怖じすんなよ!ってまあ思いますが、クセってなかなか抜けないじゃないですか。
がんばるぞ!って言っても行動が追い付かなかったり。
そういうこと、ない?(´・ω・`)

でもエリオくんはやればできる子なので、かっこいい主人公というよりは等身大で頑張ってる主人公、みたいに見えたらいいなーと思いつつ書いていきます。
……後々がらっと変更する可能性も否めないんですが。。。

category:

コメントを投稿

ご感想をどうぞ!
お問合せはSilverPostかメールまでお願いします