2026-04-11

Dark Hunter / 第一幕〈2〉

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 アロイス・ドミナ暦六百十三年、八月二十日。
 ファズガル教団と魔竜軍によるテロウ村襲撃事件から丁度五年になるこの日、エリオット・エスロイは故郷の(とむら)いのため、花束を手に村の跡地へと向かっていた。

 ふわりと寝癖のついた艶やかな黒髪は風になびき、深い海を思わせる青い瞳は強い意志を宿し、車の外に流れて行く景色を見つめる。
 魔動車に揺られながら見る道中の景色は、五年前では想像もつかないほど荒れ果てていた。

 車が走りやすく舗装されていた道は朽ちて放置されたままで、周辺には知能なくただ餌となる魔力を求めて生物に襲いかかる魔物が蔓延(はびこ)っている。

 魔動車は木の一本さえ見えない殺風景な場所に停まる。

「着いたぞ」

 運転手の男は後部座席に座るエリオットにぶっきらぼうに言う。
 エリオットは魔動車から降り、辺りを見渡す。
 辺りは黒く焦げた痕跡と新しく芽吹いた緑が広がり、遠くにはぽつんと石碑が建っている。
 ここはかつてのテロウ村の入口で、後ろにはハナトキの森があったはずだ。

 風が吹く。
 思い出の中のものとは違う、まるで見も知らぬ土地のような匂いがエリオットの胸を締め付けた。

「道中魔除けの消耗が激しいからな、十五分で戻って来いよ。遅れたら置いて行く」
 エリオットは運転手の言葉に頷く。
「わかった」

「……気を付けてな」

 以前も魔物の出没する地域を通る魔動車には抗魔結界と同じ仕組みを持つ魔除けが使われていたが、ファズガル教団によって各地の結界が破壊された今では魔物を退ける効果が薄く、魔物が蔓延る中で長時間待機するのは非常に危険だった。

 エリオットは村の中心部であった場所に建てられた、真新しい石造りの慰霊碑へと歩を進めた。

 慰霊碑の前に立つと、エリオットはしばらく花束を抱えたまま慰霊碑を見上げた。

 事件後、周辺に村人が避難した記録は無く、村には燃やし尽くされた痕跡のみが残り村人の遺体は見つからなかったという。

 三年の間、生存者の捜索と調査が続けられたが、村の調査の結果から
〝遺体が見つからなかったのは魔竜ファズガルの黒い炎「不滅の炎」によって骨まで残らず燃やされてしまったからである〟
 と結論付けられ、捜索は打ち切られてしまった。

 ……しかし、エリオットは諦めていなかった。
 家族、そして友人の死を信じたくなかった。

 慰霊碑に抱えていた花束を添え、顔の前に手を組んで精霊神教式の祈りを捧げる。

「みんな……俺、強くなってみせるから」

 エリオットは腰ベルトの拳銃(のう)に下げた父の形見の拳銃に触れ、引き抜いて手に取る。

 もう、守られてばかりだったあの頃とは違う。
 今は対魔族傭兵ダークハンターとしての一歩を踏み出し、着実に力を付けている。
 エリオットは聖銀の銃ロベリオルに誓う。
 強くなり、自分の手でテロウ村の人々を捜し見つける事を。そして、ファズガル教団に復讐する事を。

 銀の銃は太陽の光を反射し、エリオットの誓いに微笑みかけるように優しく(ひらめ)いた。
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4月18日更新予定
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🐦‍⬛からすの後書きコーナー

なんでRPGの主人公って故郷を焼かれたりしてるんだろう。
DarkHunterも元々はRPGを作りたくて考えていたお話なんですが、この設定を考えた当初は影響を受けるような作品に触れた事もなかったので、自分の作った話もそう(故郷燃やされてる)じゃん!と驚きました。
安易に思いつく設定だから、とか言っちゃうとなんか寂しいけど、たぶん動機付けするには最適なのかも。

ダークファンタジーを目指したとはいえ、エリオくんにはつらい思いばかりさせてる気がします…
絶望的な始まりから幸せな結末を目指したい系の筆者なので、明るい話も入れていきたいと思います。
でもハッピー要素を入れた時点でダークファンタジーなのだろうか?とも思わなくはなかったりして…悩ましい。

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