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エリオットは席に着く前に彼女の姿を見て、どこかで見覚えがある、と首を傾げてパンで隠れた顔を見ようとする。
低い身長に長い亜麻色のくるくると丸まった毛先の髪、肩の出た神職らしくない、若者風に作り直された巫女装束……そう、傭兵仲介所で騒動の渦中にいた巫女の少女だ。
少女はエリオットの視線に気付き、動きを止める。
「あ!」
少女とエリオットの目が合う。
少女は食べかけのパンを一気に頬張り、呑み込んだ後、机に両手を付いて席を立ち上がるとエリオットの鼻先に指を差す。
「あんた、仲介所にいたわよね!」
「えっ」
初対面の年下であろう少女に「あんた」と言われた事と、エリオットがダークハンターとして活動する事を良く思わない叔父が近くにいる状態で、エリオットは戸惑いのあまり絶句した。
「やっぱり神官でも傭兵にはなれるのよね。じゃあ、あたしでも問題ないじゃない! まったく、あのつるつる頭、まんまとあたしを騙したってわけね……」
周囲の反応を気にする様子も無く、少女はつらつらと不満を言う。
「落ち着いてください」
サードは穏やかな表情に困惑を浮かべ、少女をなだめる。
「あ、ごめんなさい。つい……」
少女はさすがに司祭であるサードを目上の人だと認識してか、態度を改めて大人しく椅子に座る。
こほん、とサードが咳払いをして席を立つと、食堂に集った寮住まいの神官達の視線がサードへ集中する。
「さて。皆さんに集まっていただいたのは、レティアローから研修に来られた方との顔合わせのためです。……レディさん、皆さんに挨拶を」
少女は名を呼ばれて、慌てて席を立ち、さっきの態度が嘘だったように行儀良く会釈して挨拶を始める。
「レティアローのポーリスから来た神殿巫女レディ・シャルアローです。突然の事でご迷惑をお掛けしますが、今日からしばらくお世話になります。よろしくお願いします」
国内外問わず、研鑽 のために他の地域から神官が研修に来るのは珍しくないのだが、エリオットは違和感を覚えていた。
恐らく、食堂に集められた神官達もそうなのだろう。彼女をどこか不思議そうに、好奇が含まれた眼差しで見つめている。
……もっとも、エリオットと同じ理由ではなく、彼女の若者風に直された巫女装束に注目しているだけなのかもしれないが。
「本来なら雷の月に入ってから迎える予定だったので足りないものもあるかと思いますが、寮の部屋にあるものは自由に使って構いません。困った事があればドリスに相談してください」
雷の月というのは九月から十月を表す精霊神教で使う古風な暦の読み方であり、三月から四月を意味する水の月と共に「事を始めるのが吉」とされる月で、研修の神官を迎えるのは通常、このふたつの時期なのだが、前倒しで入った例はエリオットの知る限りこれまで無かった。
さっきの違和感はそのせいもあるのだろう。
今は八月の末とはいえ、雷の月になるまで三日早い事になる。
サードは隣にいたドリスに頼みますよ、と声をかける。ドリスはレディと顔を合わせて、穏やかに微笑み「よろしくね」と挨拶を交わす。
ここの寮住まいの巫女は一割ほどしかいないためか、ドリスはレディが来た事を嬉しく思っている様子だった。
挨拶が終わったため、ぞろぞろと食事を既に終えていた神官達は寮の自室へと戻って行った。
エリオットは食事をしようと、自由に取るよう並べられたパンかごやスープ鍋、サラダ一式が置いてある台所前のカウンターに一人で向かう。
白く清潔な布の敷かれた籠には食べやすく切り分けられたいつもの素朴なバゲット、底の深い鍋には卵スープ、銀製のお盆にはレタスやとうもろこし、人参、豆、芋を茹でて潰したもの、鮭の燻製、海老などサラダの具材が豊富に用意されていた。
エリオットはバゲットを三切れ、レタスを先に敷いた上に豆ととうもろこしを多めに盛り付け、鮭の燻製と海老、人参を飾り付けるように散らし、深めの皿にスープを入れて席へ戻る。
「ねえ、ちょっといい?」
ドリスから寮の説明を聞いていたレディは食事をお盆に取り分けて戻って来たエリオットに気付き、話を中断して声を掛けた。
低い身長に長い亜麻色のくるくると丸まった毛先の髪、肩の出た神職らしくない、若者風に作り直された巫女装束……そう、傭兵仲介所で騒動の渦中にいた巫女の少女だ。
少女はエリオットの視線に気付き、動きを止める。
「あ!」
少女とエリオットの目が合う。
少女は食べかけのパンを一気に頬張り、呑み込んだ後、机に両手を付いて席を立ち上がるとエリオットの鼻先に指を差す。
「あんた、仲介所にいたわよね!」
「えっ」
初対面の年下であろう少女に「あんた」と言われた事と、エリオットがダークハンターとして活動する事を良く思わない叔父が近くにいる状態で、エリオットは戸惑いのあまり絶句した。
「やっぱり神官でも傭兵にはなれるのよね。じゃあ、あたしでも問題ないじゃない! まったく、あのつるつる頭、まんまとあたしを騙したってわけね……」
周囲の反応を気にする様子も無く、少女はつらつらと不満を言う。
「落ち着いてください」
サードは穏やかな表情に困惑を浮かべ、少女をなだめる。
「あ、ごめんなさい。つい……」
少女はさすがに司祭であるサードを目上の人だと認識してか、態度を改めて大人しく椅子に座る。
こほん、とサードが咳払いをして席を立つと、食堂に集った寮住まいの神官達の視線がサードへ集中する。
「さて。皆さんに集まっていただいたのは、レティアローから研修に来られた方との顔合わせのためです。……レディさん、皆さんに挨拶を」
少女は名を呼ばれて、慌てて席を立ち、さっきの態度が嘘だったように行儀良く会釈して挨拶を始める。
「レティアローのポーリスから来た神殿巫女レディ・シャルアローです。突然の事でご迷惑をお掛けしますが、今日からしばらくお世話になります。よろしくお願いします」
国内外問わず、
恐らく、食堂に集められた神官達もそうなのだろう。彼女をどこか不思議そうに、好奇が含まれた眼差しで見つめている。
……もっとも、エリオットと同じ理由ではなく、彼女の若者風に直された巫女装束に注目しているだけなのかもしれないが。
「本来なら雷の月に入ってから迎える予定だったので足りないものもあるかと思いますが、寮の部屋にあるものは自由に使って構いません。困った事があればドリスに相談してください」
雷の月というのは九月から十月を表す精霊神教で使う古風な暦の読み方であり、三月から四月を意味する水の月と共に「事を始めるのが吉」とされる月で、研修の神官を迎えるのは通常、このふたつの時期なのだが、前倒しで入った例はエリオットの知る限りこれまで無かった。
さっきの違和感はそのせいもあるのだろう。
今は八月の末とはいえ、雷の月になるまで三日早い事になる。
サードは隣にいたドリスに頼みますよ、と声をかける。ドリスはレディと顔を合わせて、穏やかに微笑み「よろしくね」と挨拶を交わす。
ここの寮住まいの巫女は一割ほどしかいないためか、ドリスはレディが来た事を嬉しく思っている様子だった。
挨拶が終わったため、ぞろぞろと食事を既に終えていた神官達は寮の自室へと戻って行った。
エリオットは食事をしようと、自由に取るよう並べられたパンかごやスープ鍋、サラダ一式が置いてある台所前のカウンターに一人で向かう。
白く清潔な布の敷かれた籠には食べやすく切り分けられたいつもの素朴なバゲット、底の深い鍋には卵スープ、銀製のお盆にはレタスやとうもろこし、人参、豆、芋を茹でて潰したもの、鮭の燻製、海老などサラダの具材が豊富に用意されていた。
エリオットはバゲットを三切れ、レタスを先に敷いた上に豆ととうもろこしを多めに盛り付け、鮭の燻製と海老、人参を飾り付けるように散らし、深めの皿にスープを入れて席へ戻る。
「ねえ、ちょっといい?」
ドリスから寮の説明を聞いていたレディは食事をお盆に取り分けて戻って来たエリオットに気付き、話を中断して声を掛けた。
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🐦⬛からすの後書きコーナー
またもや連載更新が遅れています。
こればっかりは体調と気分次第なのですが、やっぱり締め切り間に合わないと悔しいですね。
ようやくヒロイン登場なので頑張りたいところです…
やたらと食事風景を入れたいのは私の趣味です。
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