2026-09-20

Dark Hunter / 第一幕〈24〉

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 受付の隣にある細い通路の突き当りにある扉を開けて仲介所の裏手に出ると、試験や修練に使われる広場がある。
 広場は隣接する建物を遮るように黒茶色の高い塀で囲われ、塀を繋ぐ柱には丸く黄緑色の石が埋め込まれている。
 これは周辺への影響を防ぐための設備で、塀は術や衝撃を防ぐ頑丈な魔鉄で造られており、柱にある石は風の精霊術を利用した魔道具で、魔力を注いで発動すると飛び道具の外部への飛散防止と防音の効果が得られる仕組みだ。
 傭兵として登録済みの者であれば、仲介所を通して有料で教官から修練を受けたり、空いている時間を貸し切りにして自主鍛錬を行う事ができるようだが、エリオットがここへ来たのはダークハンターの試験以来だ。

 チェルシーは入口にある台座に魔石を設置して塀の柱にある魔道具を発動させ、二人に指示を出す。
「エリオットちゃんはそこで見ていて。お嬢ちゃんはアタシと一緒に中央へ」
 エリオットは建物側にある丸太を削って造られた無骨な椅子の前に移動し、修練所の中央に向かい合って立ったチェルシーとレディの様子を見守った。

「アタシが試すのは勝敗じゃなくて、どこまで戦闘に対応できるか、どんな技術を持っているかよ。アタシは手加減するけど、お嬢ちゃんは本気を出してくれていいわ」
 チェルシーはたくましく盛り上がった胸元に揺れる護符を持ちげて見せて言った。
 この護符は人工魔術が施されたもので、込められた魔力が尽きない限りはあらゆる衝撃を緩和する強力な効果が得られるものだ。
 高威力の攻撃を受けるとすぐに効果が切れてしまうため実戦には不向きだが、短時間の試験や訓練によく使われる。
 レディは長い髪で隠れていた腰元の大きなリボンに収納された短杖を取り出して両手に構え、不敵に笑った。
「ふん。あたしのこと、お嬢ちゃんって言っていられるのも今のうちなんだからね!」
「ウフフ、威勢がいいコは嫌いじゃないわよ」
 チェルシーはレディの可愛らしい威勢に口元を隠して、目元を細める。
「さあ、お手並み拝見といこうかしら。どこからでもかかってらっしゃい」
 そう言ってチェルシーが手のひらを仰いで挑発的に手招きすると、すぐにレディは精霊術の詠唱を始める。

「アルガス!」

 レディが短杖を掲げて声高らかに叫ぶと、短杖の先にある水晶が緋色に染まり、上半身が獅子、下半身がトカゲの姿をした精霊が現れ、炎の渦と共にチェルシー目掛けて飛び掛かった。
 チェルシーは両腕を構えて攻撃を受け止めたが、護符で防げる範囲ではないと見極め、素早く後ろに飛び跳ねて炎の渦の追撃を回避する。
「驚いた……! まさか水の巫女が火の精霊を使うなんて思わないじゃない」
 世辞ではなく、チェルシーは本気ですっかり油断していたようで驚きに目を見開いていた。

 観戦していたエリオットもまた、レディが火の精霊を召喚した事に驚いて思わず口が開いていた。
(水の巫女が、火の精霊の加護持ち?)
 適応しない属性の素質を持ちながら代々仕える神殿に所属する神官の話はよくあるが、水と火のように相剋(そうこく)*関係にある属性の適性を持つ者は血縁者であっても大抵の神殿では所属を拒否される。
 属性の素質は血液と同じように親から遺伝した魔力によって決まるため、厳格な神官の家系は結婚相手を属性の素質で決めるという。
 彼女の出身であるシャルアロー家はフェアリィナ神の直系と伝わる水精霊神殿の名門のはずだが

*相剋 … 互いに対立、矛盾し合う力関係

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9月22日更新予定

🐦‍⬛からすの後書きコーナー

度々更新が遅れてすみません。
ここからレディ・シャルアローというヒロイン像が明らかになってくるという重要な場面です。
登場人物の抱えるものもまるっと楽しんで続きを読んでもらえたら幸い!

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