ルイスは村で数少ない精霊術師である。
父のエルドが精霊術の使い手で、才能のあったルイスは物心付いた時から父から術を学び、自在に精霊術が使えた。
人間の内で最も人口の多いアロコイドという人種は体内の魔力量が少なく、加齢による増加に加えて長年の魔力鍛錬を積まなければ精霊術を扱う事は難しいとされているが、精霊の加護を持って生まれた人間は短期間で強力な力を扱えるようになると云 われる。
加護持ちのルイスは雨を降らせたり川のうねりさえ操ってしまえるほどの力を持っていたが、エリオットも同じく父から精霊術を学んだものの、コップ一杯の水を動かすのが精一杯であった。
ルイスの天才的な能力は村の子供だけでなく大人からも一目置かれており、雨の降らない時期になると畑仕事でも引っ張りだこで有難がられた。
ジェイは河原に着いて早々、溜息を吐 く。
「俺もモテたい」
精霊術使いが親にいるわけでもなく、加護持ちでもない、ただの悪ガキである自分が女子から一度もモテた試しのない日々を振り返って、ジェイはぼそっと呟いた。
その様子にエリオットは首を傾げる。
「どうしたの、ジェイ」
「何でもない。生まれつきモテる要素持ったヤツがいてユーウツなだけだよ」
ジェイは結局ルイスが付いて来てしまった事に肩を落とした。
「俺は向こうで見てる」
ルイスは河原の近くに立つ大木の下を指す。
「うん」
ジェイが懸念した通り、河原に集まっていた女子群はルイスの姿を見た途端に顔色を変えてルイスの傍 へ駆け寄る。
河原で遊んでいた男子たちはこぞって女子を引き留めようとするが、女子たちはルイスに夢中で聞く耳を持たなかった。
普段のルイスは出不精で殆 ど外に出て来ないため、今こそ交流の機会だとばかりに女子が押し寄せる。その様は都会のスターが田舎に突如現れたかのように異様であった。
「ジェーーーイ! エリオットーーー!」
川に浸っていた少年が大きく手を振って甲高い声で二人を呼ぶ。エリオットは手を大きく振り返す。
彼は二人が来るのを待ちきれなかったのか、川から上がってジェイとエリオットに駆け寄って来た。
「おはよう、ハイル」
小麦色の髪とそばかす、人の良さそうな垂れ目が特徴的な、ハイルことハイラプキン・ニコラウスはテロウ村の村長の1人息子で、この村の男子の中で唯一エリオットと同い年である。
「二人とも、おはよ~。ルイスの人気は相変わらずだねぇ。さっきまでみんな、女子に魚捕りの腕前を見せるんだって張り切ってたのに、もうやる気失くしちゃったみたい」
ハイルの言う通り、河原には木陰のルイスに妬 みの視線を送りながら項垂 れる男子たちがいた。
「テロウでは昔から狩りや魚捕りの上手い男は良い旦那になるって言い伝えがあるけど、ルイスが本気出せば僕たち形無しだよねぇ」
ルイスは精霊術で水と冷気を操れるため、水の流れを変えて魚を誘導し、川ごと魚を凍らせてしまえば鮮度を保ちながら家まで持ち運べる。
その上、狩人である父から刃物の扱いも学んでおり、魚を捌 く事から狩りで捕った獲物の処理まで慣れたものである。
実際、その腕に惚れ込んでルイスを将来の夫として狙っている女子は同年代でほぼ全員、年上の未婚の女性すらもルイスに注目している節が見られ、言い伝えはあながち真実だと言える。
ジェイが思いを寄せる村一番の美少女、ティアナさえも頬を紅潮させてルイスに夢中な様子である。
「ちくしょう、ティアナちゃんまで……」
ジェイは悔しそうに勢いをつけて川へ飛び込んで行く。
「もう女子なんて気にすんな! ハイル、小屋からバケツ持って来い。今日の夕飯は魚だーーーっ!」
ジェイは早速魚影を見つけ、素手で狙いを定める。
「気にすんな……って、ジェイが一番気にしてたんじゃないのさ」
ハイルは呆れながら河原の脇にある木造の小屋へと向かった。
「ほら、エリオットもぼさっとしてないで、そっちから追い込んでくれよ」
「わかった!」
エリオットは短パンの裾 を捲 って川に入る。
「術になんか頼らなくても、魚は捕れるんだからな」
精霊術の使えるルイスを除けば、テロウ村の子供の中で魚捕りが一番上手いのはジェイだ。
追い込むための人員配置や魚の動きを予測するのはお手のもので、あっと言う間に十匹以上の川魚をバケツに入れた。
「ほーら、どんなもんよ」
得意げに鼻を高くして両手に魚の入ったバケツを掲げる。
「さすがジェイ!」
ハイルとエリオットは見事なジェイの腕前に拍手を送る。
「僕たちもジェイに負けてられないね」
ジェイに倣 えと、二人はやる気十分に魚影を探した。
父のエルドが精霊術の使い手で、才能のあったルイスは物心付いた時から父から術を学び、自在に精霊術が使えた。
人間の内で最も人口の多いアロコイドという人種は体内の魔力量が少なく、加齢による増加に加えて長年の魔力鍛錬を積まなければ精霊術を扱う事は難しいとされているが、精霊の加護を持って生まれた人間は短期間で強力な力を扱えるようになると
加護持ちのルイスは雨を降らせたり川のうねりさえ操ってしまえるほどの力を持っていたが、エリオットも同じく父から精霊術を学んだものの、コップ一杯の水を動かすのが精一杯であった。
ルイスの天才的な能力は村の子供だけでなく大人からも一目置かれており、雨の降らない時期になると畑仕事でも引っ張りだこで有難がられた。
ジェイは河原に着いて早々、溜息を
「俺もモテたい」
精霊術使いが親にいるわけでもなく、加護持ちでもない、ただの悪ガキである自分が女子から一度もモテた試しのない日々を振り返って、ジェイはぼそっと呟いた。
その様子にエリオットは首を傾げる。
「どうしたの、ジェイ」
「何でもない。生まれつきモテる要素持ったヤツがいてユーウツなだけだよ」
ジェイは結局ルイスが付いて来てしまった事に肩を落とした。
「俺は向こうで見てる」
ルイスは河原の近くに立つ大木の下を指す。
「うん」
ジェイが懸念した通り、河原に集まっていた女子群はルイスの姿を見た途端に顔色を変えてルイスの
河原で遊んでいた男子たちはこぞって女子を引き留めようとするが、女子たちはルイスに夢中で聞く耳を持たなかった。
普段のルイスは出不精で
「ジェーーーイ! エリオットーーー!」
川に浸っていた少年が大きく手を振って甲高い声で二人を呼ぶ。エリオットは手を大きく振り返す。
彼は二人が来るのを待ちきれなかったのか、川から上がってジェイとエリオットに駆け寄って来た。
「おはよう、ハイル」
小麦色の髪とそばかす、人の良さそうな垂れ目が特徴的な、ハイルことハイラプキン・ニコラウスはテロウ村の村長の1人息子で、この村の男子の中で唯一エリオットと同い年である。
「二人とも、おはよ~。ルイスの人気は相変わらずだねぇ。さっきまでみんな、女子に魚捕りの腕前を見せるんだって張り切ってたのに、もうやる気失くしちゃったみたい」
ハイルの言う通り、河原には木陰のルイスに
「テロウでは昔から狩りや魚捕りの上手い男は良い旦那になるって言い伝えがあるけど、ルイスが本気出せば僕たち形無しだよねぇ」
ルイスは精霊術で水と冷気を操れるため、水の流れを変えて魚を誘導し、川ごと魚を凍らせてしまえば鮮度を保ちながら家まで持ち運べる。
その上、狩人である父から刃物の扱いも学んでおり、魚を
実際、その腕に惚れ込んでルイスを将来の夫として狙っている女子は同年代でほぼ全員、年上の未婚の女性すらもルイスに注目している節が見られ、言い伝えはあながち真実だと言える。
ジェイが思いを寄せる村一番の美少女、ティアナさえも頬を紅潮させてルイスに夢中な様子である。
「ちくしょう、ティアナちゃんまで……」
ジェイは悔しそうに勢いをつけて川へ飛び込んで行く。
「もう女子なんて気にすんな! ハイル、小屋からバケツ持って来い。今日の夕飯は魚だーーーっ!」
ジェイは早速魚影を見つけ、素手で狙いを定める。
「気にすんな……って、ジェイが一番気にしてたんじゃないのさ」
ハイルは呆れながら河原の脇にある木造の小屋へと向かった。
「ほら、エリオットもぼさっとしてないで、そっちから追い込んでくれよ」
「わかった!」
エリオットは短パンの
「術になんか頼らなくても、魚は捕れるんだからな」
精霊術の使えるルイスを除けば、テロウ村の子供の中で魚捕りが一番上手いのはジェイだ。
追い込むための人員配置や魚の動きを予測するのはお手のもので、あっと言う間に十匹以上の川魚をバケツに入れた。
「ほーら、どんなもんよ」
得意げに鼻を高くして両手に魚の入ったバケツを掲げる。
「さすがジェイ!」
ハイルとエリオットは見事なジェイの腕前に拍手を送る。
「僕たちもジェイに負けてられないね」
ジェイに
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多分、ルイスがいなかったらジェイのほうが村で一番モテてました。
ルイスは能力も容姿もチート級だから、今時なら異世界転生してきたんか?って思うレベルですね。
出不精っていうとあまり印象良くないらしいですが、能力高くて眉目秀麗って要素が付くと覆るんでしょうね~「イケメンなら許される」っていうアレですかね……うーん世知辛い……
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