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エルドはエリオットの熱意にたじろぐ。
「こんなに頼み込んでいるのに、どうしても駄目なのかい?」
ヴァイスの加勢に、エルドは揺らぎ始める。
「だって、なぁ。ルイーズも子供にあまり危険な事はさせるなって言うし……ほら、十五歳からだと魔力も安定してくるから、魔力弾の使い方も一緒に教えられると思ってだな」
情けない言い訳のようにも聞こえるが、エルドの話した事は事実であった。
もともとエルドは銃に興味を持ってくれたエリオットに対して前向きに教えようとしていたが、ルイーズにはやや過保護気味なところがあり、武器を教えると言うと猛反対だったのだ。
エスロイ家の取り決めにおいて、日々の美味しい食事を作るルイーズが絶対的であり、エルドはいわば、尻に敷かれている状態なのであった。
夫婦の話し合いでは、狩りができる十五歳になったらという話で落着しており、精霊術は生活と魔力の安定を促すためだと小一時間説得してやっと認められたくらいだ。
ルイスはあとひと月もしない内に十五歳を迎えるために、ヴァイスからの剣術指南は許されるだろうと判断したが、エリオットはまだ三年しなければルイーズに武器の取扱いを学ぶ事は許可されない。
エルドはエリオットに銃を教えたいのは山々だが、妻と衝突して美味しいご飯と愛情が貰えなくなるのは辛い、という板挟みの心情であった。
エルドはふとルイスと目が合い、ルイスの眼差しが冷ややかに向けられている事に気付き、観念したようにエルドは天を仰いだ。
「はぁ……わかった。わかったから、そんな目で見るなって。それじゃあ、母さんには内緒で次の休みの日までに練習用の銃を見繕って来るから、楽しみにしとけよ」
「やった!」
エルドはエリオットの喜ぶ姿に笑うが、内心ではバレたら妻からどんな仕打ちが待っているのかを考えて戦慄していた。
「親子っていうのは、いいものだな」
ヴァイスがぽつりと呟いた言葉にエルドは耳聡 く反応し、嬉しそうに「だろ?」と話す。
「ルイスもエリオットも、俺の自慢の可愛い子供だ」
エルドはルイスとエリオットの頭に手を置いて、髪がくしゃくしゃになるまで撫でまわす。
ルイスは睨むように目を細め、父の顔を見上げる。エルドは「悪い悪い」と笑って二人の頭から手を離すが、髪の毛が乱れてひどかった。
「さてと。村の集会に出ないといけないから、そろそろ戻るよ。改めて、ヴァイス、明日から息子達をよろしく頼む」
くしゃくしゃになった髪を手櫛で整える可愛らしい姿の兄弟を見て、くすくすと笑いを漏らしながら、ヴァイスは「ああ」と頷いた。
エルドは片手を上げて別れを告げ、村の方へ足を向ける。ルイスとエリオットは父の後ろを続く。
エリオットは振り返ってヴァイスに大きく手を振った。
「またね、ヴァイスさん!」
ヴァイスは木の下で村へ帰って行く親子に小さく手を振り、見送った。
「こんなに頼み込んでいるのに、どうしても駄目なのかい?」
ヴァイスの加勢に、エルドは揺らぎ始める。
「だって、なぁ。ルイーズも子供にあまり危険な事はさせるなって言うし……ほら、十五歳からだと魔力も安定してくるから、魔力弾の使い方も一緒に教えられると思ってだな」
情けない言い訳のようにも聞こえるが、エルドの話した事は事実であった。
もともとエルドは銃に興味を持ってくれたエリオットに対して前向きに教えようとしていたが、ルイーズにはやや過保護気味なところがあり、武器を教えると言うと猛反対だったのだ。
エスロイ家の取り決めにおいて、日々の美味しい食事を作るルイーズが絶対的であり、エルドはいわば、尻に敷かれている状態なのであった。
夫婦の話し合いでは、狩りができる十五歳になったらという話で落着しており、精霊術は生活と魔力の安定を促すためだと小一時間説得してやっと認められたくらいだ。
ルイスはあとひと月もしない内に十五歳を迎えるために、ヴァイスからの剣術指南は許されるだろうと判断したが、エリオットはまだ三年しなければルイーズに武器の取扱いを学ぶ事は許可されない。
エルドはエリオットに銃を教えたいのは山々だが、妻と衝突して美味しいご飯と愛情が貰えなくなるのは辛い、という板挟みの心情であった。
エルドはふとルイスと目が合い、ルイスの眼差しが冷ややかに向けられている事に気付き、観念したようにエルドは天を仰いだ。
「はぁ……わかった。わかったから、そんな目で見るなって。それじゃあ、母さんには内緒で次の休みの日までに練習用の銃を見繕って来るから、楽しみにしとけよ」
「やった!」
エルドはエリオットの喜ぶ姿に笑うが、内心ではバレたら妻からどんな仕打ちが待っているのかを考えて戦慄していた。
「親子っていうのは、いいものだな」
ヴァイスがぽつりと呟いた言葉にエルドは耳
「ルイスもエリオットも、俺の自慢の可愛い子供だ」
エルドはルイスとエリオットの頭に手を置いて、髪がくしゃくしゃになるまで撫でまわす。
ルイスは睨むように目を細め、父の顔を見上げる。エルドは「悪い悪い」と笑って二人の頭から手を離すが、髪の毛が乱れてひどかった。
「さてと。村の集会に出ないといけないから、そろそろ戻るよ。改めて、ヴァイス、明日から息子達をよろしく頼む」
くしゃくしゃになった髪を手櫛で整える可愛らしい姿の兄弟を見て、くすくすと笑いを漏らしながら、ヴァイスは「ああ」と頷いた。
エルドは片手を上げて別れを告げ、村の方へ足を向ける。ルイスとエリオットは父の後ろを続く。
エリオットは振り返ってヴァイスに大きく手を振った。
「またね、ヴァイスさん!」
ヴァイスは木の下で村へ帰って行く親子に小さく手を振り、見送った。
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🐦⬛からすの後書きコーナー
このあたりは父と銃の関係、そしてようやく「ダークハンター」という名称が登場して、後に繋がりそうな場面になりました。
エスロイ家についてはなんというか、からすの理想みたいな部分があるのですが、家庭の力関係では母のルイーズが一番強いっていう部分がさりげなくお気に入りです。戦闘能力はほとんどないけど、美味しい手料理と普段の愛情によって権力を持っているというか。ちょっと面白いかなと、そんな家庭にしてみました。
……さて、次回からやーーーーっと序幕後編です。
ちょっと連載が詰まり気味ですが、頑張って続けていきたいと思います!
精霊術と剣、銃の指南を受ける事になった兄弟ですが、村に事件が…?
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