⚠注意⚠
この回は文章中に以下の表現が含まれます苦手な方はご注意ください
含まれる表現
死を連想させる描写?[ON]にすると字下げがなくなり行間が広がります
ヴァイスは左肩の傷を押さえていた右手を外套から離し、手のひらを上に向けて詠唱を始める。
手のひらに眩い光が集まり、精霊の化身である小さな光の蝶が手のひらの周りを舞う。
詠唱を終えたヴァイスは光を包むように手のひらを握り締め、傾ける。
すると、手の中から光がこぼれ出し、一枚の布を思わせる細かい光の粒子の連なりが現れた。
「この光の粒子を纏えば、光の屈折で姿を隠す事ができる。魔竜軍やファズガル教団に見つからないように、これで姿を隠して行こう」
ヴァイスはそう説明した後、布のようになった光の粒子を宙へ引っ張り、エリオットとジェイにかぶせた。
「すごい……!」
「消えたっ?!」
エリオットとジェイはお互いの姿が見えなくなった事に驚く。
居る場所の景色が歪んで見えるが、よほど注意しない限り森の景色の一部に溶け込んで見える。
ヴァイスがもう一度詠唱すると、光の蝶がジェイとエリオットの纏う光に溶け込み、輪郭を光らせた。
「これで同じ術がかかっている者同士なら輪郭が見えるだろう。私も姿を隠して行く。二人とも、はぐれないように付いて来てくれ」
ヴァイスは自分にも同じ術を施し、姿を隠す。
「こっちへ」
三人は森の木々の間を縫うように北東の方角へと向かった。
しばらく進むと、向かう先から人の叫び声が聞こえ、三人は足を止める。
木々の間から、もがく傭兵の頭を鷲掴みにして嘲笑うファズガル教団員と思しき黒衣の人物が見えた。
ヴァイスはエリオットとジェイに避けて通ろるようにと手を振って合図し、進行方向を変える。
傭兵の断末魔が森の中に響き、エリオットは顔を歪めた。
傭兵の叫び声が耳にこびり付くように残ったが、今の自分に、傭兵を助ける力も余裕も無かった。
逃げなければ、あの傭兵のように殺されるかもしれない。エリオットは自分にそう言い聞かせ、必死でヴァイスの後を追う。
森の外から光が射し込む林縁 が近くなると、落ち込んでいた気持ちも若干軽くなるようだった。
森の木々が途切れる手前でヴァイスは何かに気付き、急に立ち止まり、木々を見上げて上部を警戒する。
どうしたのかと、エリオットとジェイは辺りを見回す。
「下がって!」
ヴァイスの大声に、背後に居た二人は身を竦ませる。
ヴァイスは瞬時に前方に幅広の巨大な光の盾を作り出す。
光の盾は前方の上部から放たれた無数の矢を弾き飛ばし、三人を守った。
盾を作る代わりに維持できなくなってしまったのか、エリオット達の姿を隠していた術は解ける。
乾いた拍手が頭上から鳴り響く。
「お見事」
木の上を見上げると、蝙蝠の羽根を持つ女性がぶら下がり、手を打ち鳴らしていた。
彼女は翼を広げ、地面に降り立つ。
身に纏う竜の紋章が縫い付けられた黒の法衣は彼女がファズガル教団の一人という事を象徴していた。
「残念だけど、姿を隠そうが魔力を隠そうが、こちらには音に敏感な子もいるのよ」
蝙蝠女が片手を上げて合図すると、木の上に弓を番えた教団員の姿が現れる。
「森は私たちファズガル教団が包囲しているわ。お前たちに逃げ道なんてないの。大人しくその命を差し出しなさい」
手のひらに眩い光が集まり、精霊の化身である小さな光の蝶が手のひらの周りを舞う。
詠唱を終えたヴァイスは光を包むように手のひらを握り締め、傾ける。
すると、手の中から光がこぼれ出し、一枚の布を思わせる細かい光の粒子の連なりが現れた。
「この光の粒子を纏えば、光の屈折で姿を隠す事ができる。魔竜軍やファズガル教団に見つからないように、これで姿を隠して行こう」
ヴァイスはそう説明した後、布のようになった光の粒子を宙へ引っ張り、エリオットとジェイにかぶせた。
「すごい……!」
「消えたっ?!」
エリオットとジェイはお互いの姿が見えなくなった事に驚く。
居る場所の景色が歪んで見えるが、よほど注意しない限り森の景色の一部に溶け込んで見える。
ヴァイスがもう一度詠唱すると、光の蝶がジェイとエリオットの纏う光に溶け込み、輪郭を光らせた。
「これで同じ術がかかっている者同士なら輪郭が見えるだろう。私も姿を隠して行く。二人とも、はぐれないように付いて来てくれ」
ヴァイスは自分にも同じ術を施し、姿を隠す。
「こっちへ」
三人は森の木々の間を縫うように北東の方角へと向かった。
しばらく進むと、向かう先から人の叫び声が聞こえ、三人は足を止める。
木々の間から、もがく傭兵の頭を鷲掴みにして嘲笑うファズガル教団員と思しき黒衣の人物が見えた。
ヴァイスはエリオットとジェイに避けて通ろるようにと手を振って合図し、進行方向を変える。
傭兵の断末魔が森の中に響き、エリオットは顔を歪めた。
傭兵の叫び声が耳にこびり付くように残ったが、今の自分に、傭兵を助ける力も余裕も無かった。
逃げなければ、あの傭兵のように殺されるかもしれない。エリオットは自分にそう言い聞かせ、必死でヴァイスの後を追う。
森の外から光が射し込む
森の木々が途切れる手前でヴァイスは何かに気付き、急に立ち止まり、木々を見上げて上部を警戒する。
どうしたのかと、エリオットとジェイは辺りを見回す。
「下がって!」
ヴァイスの大声に、背後に居た二人は身を竦ませる。
ヴァイスは瞬時に前方に幅広の巨大な光の盾を作り出す。
光の盾は前方の上部から放たれた無数の矢を弾き飛ばし、三人を守った。
盾を作る代わりに維持できなくなってしまったのか、エリオット達の姿を隠していた術は解ける。
乾いた拍手が頭上から鳴り響く。
「お見事」
木の上を見上げると、蝙蝠の羽根を持つ女性がぶら下がり、手を打ち鳴らしていた。
彼女は翼を広げ、地面に降り立つ。
身に纏う竜の紋章が縫い付けられた黒の法衣は彼女がファズガル教団の一人という事を象徴していた。
「残念だけど、姿を隠そうが魔力を隠そうが、こちらには音に敏感な子もいるのよ」
蝙蝠女が片手を上げて合図すると、木の上に弓を番えた教団員の姿が現れる。
「森は私たちファズガル教団が包囲しているわ。お前たちに逃げ道なんてないの。大人しくその命を差し出しなさい」
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次週土曜更新予定
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🐦⬛からすの後書きコーナー
さすがに週1で本年中に序幕完結は難しい流れになってきたため、正月に一挙連載します。
……というわけで、当初予定よりも少しばかり詳しい描写をしちゃおうかなと現編集の段階で企んでおります。
序幕完結までお付き合いいただけると幸いです!
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