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蝙蝠女が上げていた手のひらを握り締めると、それを合図に木の上の教団員達は一斉に矢を放った。
ヴァイスは再び光の盾で矢を防ぐが、左肩の負傷と相次ぐ魔力の消耗に堪え切れず、息を切らして片膝を地面についてしまう。
「あら? その様子なら、時間の問題かしらね」
蝙蝠女はくすくすと笑い、もう一度手を上げて木の上の部隊に弓を番える合図をした。
左肩の傷が開いてしまったのか、ヴァイスの白い外套がじわじわと赤く染まっていく。
「……次の攻撃は全て私に逸らす。君たちは、その隙に逃げるんだ」
ヴァイスは蝙蝠女を睨みながら、背後で不安そうに見つめるエリオットとジェイに言った。
「ヴァイスさん……」
エリオットは今自分にできる事は言われた通りに逃げる事だけなのだろうか、と懸命に考えるが、良い案は浮かんで来ない。
前方には蝙蝠女と弓部隊がおり、後退した所には傭兵をいたぶっていた教団員が居る。
もし、その教団員が移動して合流した場合、逃げる隙さえ失ってしまうだろう。
逃げるのなら右手、南寄りの方向のみとなるが、伏兵が居た場合は詰みとなる。
「ふぅん。面白いわね。死にぞこないが、自分を犠牲にして子供を逃がすつもり? いくら逃げてもこちらは数で勝っているのよ。諦めたらどう?」
ジェイは奥歯を噛み締め、顔を上げて蝙蝠女を睨み付け、一歩前へ出て声を張り上げた。
「なんでお前たちは村を襲ったんだよ! 俺たちはただ平和に暮らしたかっただけなのに、なんで……なんで奪っていくんだよ!!」
ヴァイスは右腕でジェイがそれ以上前に出るのを制止する。
蝙蝠女は変わったものを見るように激怒するジェイに注目し、不意に手を下げた。
ジェイは蝙蝠女の一挙一動にびくつき、その様を見て蝙蝠女は鼻で笑う。
「――呆れた、世間知らずなガキね。田舎だから仕方ないのかしら? 人間がどんな仕打ちを魔族にしてきたかも知らないなんて」
蝙蝠女は再び真っ直ぐに手を上げる。
「私たちは人間を根絶やしにして、理想の世界を作りたいだけ。お前たちはその犠牲になった――それだけのことよ」
蝙蝠女の手のひらが握り締められ、弓部隊は合図を受けて一斉に矢の雨を降らせる。
ヴァイスは構えた光の盾に魔力を集め、盾を宙に投げるようにして降り注ぐ矢を薙ぎ払った。
薙ぎ払った時に起きた風圧が盾の前に竜巻を作り出し、徐々に大きくなる竜巻は木の上に居たファズガル教団を呑み込んで行く。
竜巻は草葉と砂塵を巻き込み、視界を遮る。
ヴァイスはその隙に、エリオットとジェイに振り返り、微笑んで見せた。
「精霊の加護を」
二人は竜巻の外側へと押し出され、ヴァイスと引き離される。
「ヴァイスさんっ!」
竜巻の内部に居るヴァイスの姿が見えなくなり、エリオットは叫んだが、風の音で声は掻き消されてしまった。
宙から、後ろ足に翼を持つ猫のような姿をした精霊が下りて来る。
精霊はエリオットとジェイの周りを飛び、二人を優しい風で包み込む。
二人が纏った風は激しい竜巻の影響を防ぎ、進むべき方向へと導く。
二人は顔を見合わせて頷き、風が導く方へと走り出した。
ヴァイスは再び光の盾で矢を防ぐが、左肩の負傷と相次ぐ魔力の消耗に堪え切れず、息を切らして片膝を地面についてしまう。
「あら? その様子なら、時間の問題かしらね」
蝙蝠女はくすくすと笑い、もう一度手を上げて木の上の部隊に弓を番える合図をした。
左肩の傷が開いてしまったのか、ヴァイスの白い外套がじわじわと赤く染まっていく。
「……次の攻撃は全て私に逸らす。君たちは、その隙に逃げるんだ」
ヴァイスは蝙蝠女を睨みながら、背後で不安そうに見つめるエリオットとジェイに言った。
「ヴァイスさん……」
エリオットは今自分にできる事は言われた通りに逃げる事だけなのだろうか、と懸命に考えるが、良い案は浮かんで来ない。
前方には蝙蝠女と弓部隊がおり、後退した所には傭兵をいたぶっていた教団員が居る。
もし、その教団員が移動して合流した場合、逃げる隙さえ失ってしまうだろう。
逃げるのなら右手、南寄りの方向のみとなるが、伏兵が居た場合は詰みとなる。
「ふぅん。面白いわね。死にぞこないが、自分を犠牲にして子供を逃がすつもり? いくら逃げてもこちらは数で勝っているのよ。諦めたらどう?」
ジェイは奥歯を噛み締め、顔を上げて蝙蝠女を睨み付け、一歩前へ出て声を張り上げた。
「なんでお前たちは村を襲ったんだよ! 俺たちはただ平和に暮らしたかっただけなのに、なんで……なんで奪っていくんだよ!!」
ヴァイスは右腕でジェイがそれ以上前に出るのを制止する。
蝙蝠女は変わったものを見るように激怒するジェイに注目し、不意に手を下げた。
ジェイは蝙蝠女の一挙一動にびくつき、その様を見て蝙蝠女は鼻で笑う。
「――呆れた、世間知らずなガキね。田舎だから仕方ないのかしら? 人間がどんな仕打ちを魔族にしてきたかも知らないなんて」
蝙蝠女は再び真っ直ぐに手を上げる。
「私たちは人間を根絶やしにして、理想の世界を作りたいだけ。お前たちはその犠牲になった――それだけのことよ」
蝙蝠女の手のひらが握り締められ、弓部隊は合図を受けて一斉に矢の雨を降らせる。
ヴァイスは構えた光の盾に魔力を集め、盾を宙に投げるようにして降り注ぐ矢を薙ぎ払った。
薙ぎ払った時に起きた風圧が盾の前に竜巻を作り出し、徐々に大きくなる竜巻は木の上に居たファズガル教団を呑み込んで行く。
竜巻は草葉と砂塵を巻き込み、視界を遮る。
ヴァイスはその隙に、エリオットとジェイに振り返り、微笑んで見せた。
「精霊の加護を」
二人は竜巻の外側へと押し出され、ヴァイスと引き離される。
「ヴァイスさんっ!」
竜巻の内部に居るヴァイスの姿が見えなくなり、エリオットは叫んだが、風の音で声は掻き消されてしまった。
宙から、後ろ足に翼を持つ猫のような姿をした精霊が下りて来る。
精霊はエリオットとジェイの周りを飛び、二人を優しい風で包み込む。
二人が纏った風は激しい竜巻の影響を防ぎ、進むべき方向へと導く。
二人は顔を見合わせて頷き、風が導く方へと走り出した。
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1月1日更新予定
1月1日更新予定
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🐦⬛からすの後書きコーナー
今年はここまで連載小説にお付き合いいただきありがとうございました!
次回から序幕最終話まではお正月に一挙連載となります。
来年もDarkHunterをよろしくお願いします!
追伸。
「Dark Hunter」だとありきたりだなーということで、本タイトル+αを考えていたのですが、ようやく決定しました。
「Dark Hunter リーンヴェルの円環」です。
……タイトル長くなったー
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