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ヴァイスがかけた風の術に背を押され、エリオットとジェイは流れる風に導かれるまま森を抜け、平原を駆けた。
途中で、向かうべき方向へと導いてくれていた精霊が姿を消し、二人を包み込んでいた風が止まる。
途切れた精霊の気配に、エリオットは森へ振り返る。
ヴァイスと別れた場所からはだいぶ離れ、ここからは何も見えない。
その代わりに、村から紅蓮の炎が上がっているのを目にする。
「村が……!」
エリオットは村に向かった父を案じた。
父は母と村人達を無事に避難させただろうか。
もし、蝙蝠女の言う通りにファズガル教団が森を囲んでいるのなら、避難する父や村人達の状況は悪いのではないか、と不安に駆られる。
ファズガル教団は純粋な魔族ではなく、抗魔結界の効果は薄いとヴァイスは言っていた。
あんなに強かった父とヴァイスが塔で教団と戦い苦戦していた事を思えば、村に残された傭兵の力がどれほど通用するだろうか。
ジェイは村から上がる火の手を見て立ち止まるエリオットの揺れる瞳を見て、手を掴む。
エリオットは手を捕まれた感覚で、不安定になった思考から意識を戻す。
「エリオット、今はヘンザへ行く事だけ考えろ」
そう言ったジェイの表情は強張っており、動揺している様子だった。
「……うん」
ジェイは平原を横断するシーラ川に架かる橋を指差す。
「川を越えたら、ヘンザまでもうすぐだ。運が良ければ魔動車が通るかもしれない」
風の術で走っていた間は疲れを感じなかったが、これまで移動してばかりだった二人の足は疲れ切っており、走る事も限界に近付いていた。
もし、追手が来ていたら、逃げ切れるかどうかも怪しい。
要塞都市ヘンザへ向かう行商や傭兵の乗る魔動車が通れば、助けを求め、同乗させてもらえるかもしれない。
二人は少しの希望を胸に、重い足を引きずるようにして橋へと向かった。
先に橋の前に辿り着いたジェイは石造りの親柱に手を付いて無言で立ち尽くした。
続いて橋の前までやって来たエリオットは、何事かとジェイの肩越しに首を伸ばし、頑丈な石造りの橋が中央から崩れ落ちているのを目の当たりにする。
「橋が、落ちてる……」
シーラ川の水深は深く、山脈から流れて来る水の流れは早い。泳いで行くには危険すぎる。
「兄ちゃんなら、術を使って渡れるのに……」
エリオットは兄の事を思い出し、ぽつりと呟いた。
兄ルイスの精霊術なら、川のうねりを操って穏やかにする事もできる。守護精霊に氷の精霊を持つため、水の術以上に、冷気を操って足場を作り出す事もできるはずだ。
ヴァイスに数日の間、精霊術を習っていたとは言え、エリオットに出来るのはせいぜいバケツ一杯の水を動かす事と、宙に水泡を作り出す程度である。
エリオットには兄のような技術も、魔力も持ち合わせてはいなかった。
「ごめん、ジェイ」
「はぁ? なんでエリオットが謝るんだよ」
項垂れるエリオットにジェイは焦って慰めの言葉を必死に考える。
「ルイスがここにいないのは仕方ないだろ。俺たちは別の道を探そう。考えようでは、後からルイスと来る人たちはここを渡れるってことだろ」
「……そ、そっか。そうだよね」
慰めようとするジェイに、エリオットは空元気に笑って見せた。
「でも、どうしよう? ここを通らないとヘンザに行けないよ」
テロウ村周辺は川と山脈で囲まれ、他の町村へ行くには必ずこの川を通る必要があった。
ジェイはどうしたものか、と橋の親柱に寄りかかって腕を組み打開策を考える。
途中で、向かうべき方向へと導いてくれていた精霊が姿を消し、二人を包み込んでいた風が止まる。
途切れた精霊の気配に、エリオットは森へ振り返る。
ヴァイスと別れた場所からはだいぶ離れ、ここからは何も見えない。
その代わりに、村から紅蓮の炎が上がっているのを目にする。
「村が……!」
エリオットは村に向かった父を案じた。
父は母と村人達を無事に避難させただろうか。
もし、蝙蝠女の言う通りにファズガル教団が森を囲んでいるのなら、避難する父や村人達の状況は悪いのではないか、と不安に駆られる。
ファズガル教団は純粋な魔族ではなく、抗魔結界の効果は薄いとヴァイスは言っていた。
あんなに強かった父とヴァイスが塔で教団と戦い苦戦していた事を思えば、村に残された傭兵の力がどれほど通用するだろうか。
ジェイは村から上がる火の手を見て立ち止まるエリオットの揺れる瞳を見て、手を掴む。
エリオットは手を捕まれた感覚で、不安定になった思考から意識を戻す。
「エリオット、今はヘンザへ行く事だけ考えろ」
そう言ったジェイの表情は強張っており、動揺している様子だった。
「……うん」
ジェイは平原を横断するシーラ川に架かる橋を指差す。
「川を越えたら、ヘンザまでもうすぐだ。運が良ければ魔動車が通るかもしれない」
風の術で走っていた間は疲れを感じなかったが、これまで移動してばかりだった二人の足は疲れ切っており、走る事も限界に近付いていた。
もし、追手が来ていたら、逃げ切れるかどうかも怪しい。
要塞都市ヘンザへ向かう行商や傭兵の乗る魔動車が通れば、助けを求め、同乗させてもらえるかもしれない。
二人は少しの希望を胸に、重い足を引きずるようにして橋へと向かった。
先に橋の前に辿り着いたジェイは石造りの親柱に手を付いて無言で立ち尽くした。
続いて橋の前までやって来たエリオットは、何事かとジェイの肩越しに首を伸ばし、頑丈な石造りの橋が中央から崩れ落ちているのを目の当たりにする。
「橋が、落ちてる……」
シーラ川の水深は深く、山脈から流れて来る水の流れは早い。泳いで行くには危険すぎる。
「兄ちゃんなら、術を使って渡れるのに……」
エリオットは兄の事を思い出し、ぽつりと呟いた。
兄ルイスの精霊術なら、川のうねりを操って穏やかにする事もできる。守護精霊に氷の精霊を持つため、水の術以上に、冷気を操って足場を作り出す事もできるはずだ。
ヴァイスに数日の間、精霊術を習っていたとは言え、エリオットに出来るのはせいぜいバケツ一杯の水を動かす事と、宙に水泡を作り出す程度である。
エリオットには兄のような技術も、魔力も持ち合わせてはいなかった。
「ごめん、ジェイ」
「はぁ? なんでエリオットが謝るんだよ」
項垂れるエリオットにジェイは焦って慰めの言葉を必死に考える。
「ルイスがここにいないのは仕方ないだろ。俺たちは別の道を探そう。考えようでは、後からルイスと来る人たちはここを渡れるってことだろ」
「……そ、そっか。そうだよね」
慰めようとするジェイに、エリオットは空元気に笑って見せた。
「でも、どうしよう? ここを通らないとヘンザに行けないよ」
テロウ村周辺は川と山脈で囲まれ、他の町村へ行くには必ずこの川を通る必要があった。
ジェイはどうしたものか、と橋の親柱に寄りかかって腕を組み打開策を考える。
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1月3日更新予定
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以前、川はハナトキの森を出てすぐのところにあって、エリオくんが一人で逃げている時にやむを得ず飛び込んで…で序幕終わりまでのシーンっていう流れでした。
今回は川が森と離れた場所にあって、ジェイと二人で逃げています。
結構大幅な変更……
年始の連載ということもあって駆け足で編集しているんですが、正直また追い付いていない状況です。
何回も見直してはいるんですが、やっぱり書き直したいなとか、このままのほうがいいかとか葛藤がすごいです(苦笑)
橋についたらすぐ…って思っていましたが、ジェイとのシーンも大事かなと残すことにしました。
特に「橋が壊れてる、じゃあどうしよう?」の流れは読んだ感覚としても必要かなと感じて、長くなってもここはこのままにしておきます。
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