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「ヘンザに行くのは止めて、川沿いに南下してネジュア方面へ向かおう。ネジュア方面に抜ける橋を渡ってすぐの所に交易が盛んなバルシアって街がある。そこなら商隊の魔動車も頻繁に出ているし、ヘンザへの連絡もしやすいんじゃないか」
ジェイは家が経営する宿の手伝いでよく物資を買い付けに、父親と共に近郊の町村へ出掛けていた。その経験から、周辺の地理には明るかった。
ヘンザとは距離が離れているが、バルシアは作物や酒などの人気の特産品があり、年中遠方の都市から買い付けに訪れる商人が行き交い、貨物用の魔動車の出入りは頻繁であった。
バルシアなどの交易が盛んな街は商隊の駐車料金や宿泊料を安くする代わりに、商隊に遠方へ郵便物を届けてもらう仕組みを設けている。
そのため、ヘンザやネジュアなど都市部への連絡手段としても申し分ない。
商隊の護衛のために傭兵が駐在している点も助けを求めるには適している、とジェイは判断した。
「問題は、この足だな……」
ジェイは悔しそうに呟く。
二人の足は疲れ切って、動きが鈍くなっている。
歩きでバルシアを目指すなら、日をまたいでしまう事は必至であり、疲れ切った体で無事辿り着けるかどうかも怪しい。
そしてもし、ファズガル教団が村人を逃がさないために橋を落としたのなら、ネジュア方面へ繋がる橋にさえ目を付けている可能性も否めない。
「魔竜軍とファズガル教団さえ追って来なければ、なんとかなるだろうけど――」
「愉快ですね。我々の噂話ですか?」
突然のしわがれた男性の声に、ジェイとエリオットは顔を上げて振り返った。
橋の向こう岸に、ファズガル教団の黒い法衣を着た男が立っていた。
顔半分は黒い竜を模した仮面で隠れているが、鼻と口元は狼や狐のように突き出ており、手も獣特有のふさふさとした毛で覆われている。
ジェイとエリオットは警戒して体を強張らせた。
「少し離れていた内に、獲物が二匹もかかっているじゃあ ありませんか」
その男は手足を四つん這いにして獣のように駆け、崩れた橋の上を軽々と飛び越え、素早い身のこなしで逃げようとする二人の行く手を遮った。
「惜しいですねぇ。私が来なければ逃げられたかもしれないというのに」
男は法衣から覗く狐のような尻尾を揺らし、大きな黒い口の端を吊り上げて皮肉に笑った。
狐男は二本足で立ち身なりを整えると、二メートル近い長身で逃げ場を失った二人を見下ろす。
ジェイはエリオットを庇うように前に出て、狐男と睨み合う。
狐男は黒い毛むくじゃらの両手を開き、しまっていた長く鋭い爪を伸ばし、じりじりと二人を崩れた橋の中央まで追い詰める。
「愉快ですねぇ。前にも後ろにも死が待っているのですが、さて、どうします?」
狐男は橋の入口を鋭い爪を伸ばした両手を広げて塞ぎ、エリオットとジェイの後ろにある壊れた橋下には川が勢い良く流れ、轟々 と音を立てている。
ジェイは横目でエリオットを一瞥 し、何かを決断したように、深く息を吐いて狐男を見据えた。
「俺は親父を、母ちゃんを、お前たちファズガル教団に殺された」
ジェイの発言に、狐男の眉根がぴくりと動く。
エリオットはジェイの両親がファズガル教団に殺されてしまった事を初めて知った衝撃で目を見開く。
「今更ここで逃げるかよ!!!」
ジェイは両手を狐男に向けると、精霊術を詠唱し手のひらから鋭い風の術を放った。
狐男は両腕で顔を覆って風を防ぎ、ジェイの放った風は狐男の腕を切り刻み、血が飛び散った。
ジェイはその隙に後ろにいたエリオットの腕を引っ張り、狐男の脇を通り抜け、平原の方へと向かう。
狐男は通り抜けた二人に鋭い爪で切り裂こうと振りかぶる。
ジェイはエリオットの背中を押し、背にで狐男の爪の一撃を受けた。
「ジェイ!」
押されて前のめりになったエリオットは後ろを振り返る。
「俺にかまうな! 行け!」
ジェイは再び精霊術で対抗しようとするが、狐男は腹を抱えて笑い出す。
「ククク。いやはや、愉快ですねぇ」
「なにっ?!」
狐男が片腕を上げ、指を鳴らすと、橋が大きく揺さぶられ、中央から橋が崩れていく。
「うわああぁぁっ」
エリオットとジェイは大きな揺れに身動きできないまま、崩れていく橋と共に川の中へ呑まれた。
狐男はいつの間にか橋のたもとに移動しており、二人が川の激流に呑まれる様子を嘲笑いながら見ていた。
「おお、人間の友情とは斯 くも素晴らしい!」
ジェイは家が経営する宿の手伝いでよく物資を買い付けに、父親と共に近郊の町村へ出掛けていた。その経験から、周辺の地理には明るかった。
ヘンザとは距離が離れているが、バルシアは作物や酒などの人気の特産品があり、年中遠方の都市から買い付けに訪れる商人が行き交い、貨物用の魔動車の出入りは頻繁であった。
バルシアなどの交易が盛んな街は商隊の駐車料金や宿泊料を安くする代わりに、商隊に遠方へ郵便物を届けてもらう仕組みを設けている。
そのため、ヘンザやネジュアなど都市部への連絡手段としても申し分ない。
商隊の護衛のために傭兵が駐在している点も助けを求めるには適している、とジェイは判断した。
「問題は、この足だな……」
ジェイは悔しそうに呟く。
二人の足は疲れ切って、動きが鈍くなっている。
歩きでバルシアを目指すなら、日をまたいでしまう事は必至であり、疲れ切った体で無事辿り着けるかどうかも怪しい。
そしてもし、ファズガル教団が村人を逃がさないために橋を落としたのなら、ネジュア方面へ繋がる橋にさえ目を付けている可能性も否めない。
「魔竜軍とファズガル教団さえ追って来なければ、なんとかなるだろうけど――」
「愉快ですね。我々の噂話ですか?」
突然のしわがれた男性の声に、ジェイとエリオットは顔を上げて振り返った。
橋の向こう岸に、ファズガル教団の黒い法衣を着た男が立っていた。
顔半分は黒い竜を模した仮面で隠れているが、鼻と口元は狼や狐のように突き出ており、手も獣特有のふさふさとした毛で覆われている。
ジェイとエリオットは警戒して体を強張らせた。
「少し離れていた内に、獲物が二匹もかかっているじゃあ ありませんか」
その男は手足を四つん這いにして獣のように駆け、崩れた橋の上を軽々と飛び越え、素早い身のこなしで逃げようとする二人の行く手を遮った。
「惜しいですねぇ。私が来なければ逃げられたかもしれないというのに」
男は法衣から覗く狐のような尻尾を揺らし、大きな黒い口の端を吊り上げて皮肉に笑った。
狐男は二本足で立ち身なりを整えると、二メートル近い長身で逃げ場を失った二人を見下ろす。
ジェイはエリオットを庇うように前に出て、狐男と睨み合う。
狐男は黒い毛むくじゃらの両手を開き、しまっていた長く鋭い爪を伸ばし、じりじりと二人を崩れた橋の中央まで追い詰める。
「愉快ですねぇ。前にも後ろにも死が待っているのですが、さて、どうします?」
狐男は橋の入口を鋭い爪を伸ばした両手を広げて塞ぎ、エリオットとジェイの後ろにある壊れた橋下には川が勢い良く流れ、
ジェイは横目でエリオットを
「俺は親父を、母ちゃんを、お前たちファズガル教団に殺された」
ジェイの発言に、狐男の眉根がぴくりと動く。
エリオットはジェイの両親がファズガル教団に殺されてしまった事を初めて知った衝撃で目を見開く。
「今更ここで逃げるかよ!!!」
ジェイは両手を狐男に向けると、精霊術を詠唱し手のひらから鋭い風の術を放った。
狐男は両腕で顔を覆って風を防ぎ、ジェイの放った風は狐男の腕を切り刻み、血が飛び散った。
ジェイはその隙に後ろにいたエリオットの腕を引っ張り、狐男の脇を通り抜け、平原の方へと向かう。
狐男は通り抜けた二人に鋭い爪で切り裂こうと振りかぶる。
ジェイはエリオットの背中を押し、背にで狐男の爪の一撃を受けた。
「ジェイ!」
押されて前のめりになったエリオットは後ろを振り返る。
「俺にかまうな! 行け!」
ジェイは再び精霊術で対抗しようとするが、狐男は腹を抱えて笑い出す。
「ククク。いやはや、愉快ですねぇ」
「なにっ?!」
狐男が片腕を上げ、指を鳴らすと、橋が大きく揺さぶられ、中央から橋が崩れていく。
「うわああぁぁっ」
エリオットとジェイは大きな揺れに身動きできないまま、崩れていく橋と共に川の中へ呑まれた。
狐男はいつの間にか橋のたもとに移動しており、二人が川の激流に呑まれる様子を嘲笑いながら見ていた。
「おお、人間の友情とは
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1月4日更新予定
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ジェイ、おまい精霊術使えたんか……( ゚д゚)
と、両親殺されてたんか……の二段構えの衝撃。
エリオくんは主人公だからまあこの後どうなるかは想像できるとは思いますが、どうなっちゃうのぉー?
序幕はあと少しで完結となります!
バリバリ今も編集中よ!!!
この狐男の声のイメージは中尾隆聖さんです🙄(フリーザとかバイキンマンの声優さん)
ちょっと擦れたような、独特な高年男性の声みたいな感じで再生してくれーぃ
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