2026-01-04

Dark Hunter / 序幕〈32〉

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 激流の川の中に落ちたエリオットは咄嗟に息を止めて目を閉じた。
 水の中に沈み、流されていく感覚。壊れた橋の小さな石の破片が体に当たり、痛みに身を縮める。
 水の音が安定し、薄っすら目を開くと、川底も水面も見えない場所へ流されていた。
 先程流された場所よりは流れは穏やかになったが、流れに抗う事もままならず、水面まで浮上しようと足をばたつかせるが思うようにいかない。
 蓄積された疲労で息が続かず、ごぼごぼと口から泡が漏れ出す。
 精霊術を使って自分を泡で包み込む事ができれば助かるかもしれないと思い付くが、精霊術を使う力さえ出なかった。

 もがく内に、指先に硬い物が触れる。
 ほのかに光を宿す水色の美しい石は、自然とエリオットの手の中に収まる。
 ヴァイスから貰った精霊石だ。服のポケットの中に入れたままだったが、激流の中で飛び出たのだろう。
 エリオットはとうとう吐き出す息が無くなり、意識が朦朧とする中、精霊石をきつく握り締める。

(ごめん、みんな……)

 ヴァイスとジェイは自分を逃がすために身を(てい)してくれた。
 それだというのに、自分は結局逃げ切れもせず、誰かのためにもなれずにここで終わってしまうのだ。
 エリオットは目を閉じ、体中の感覚を放棄してしまう。
 水の音は聴こえなくなり、体は痛みも冷たさも感じず、無力に流されて行く。

 その時、緩んだ手のひらにある精霊石は熱を持ち、輝きを増してエリオットを包み込んだ。
 エリオットは意識が遠のく中、呼吸が楽になったのを感じる。
 精霊石から放たれた光は水中で優しい女性の姿を象り、エリオットのぼやけた視界で優しく微笑む。
 歪んでいく視界に映った女性の額の宝石、魚の尾びれのような髪は、まるで都市ネジュアの神殿で見た水の精霊神のように見えた。
(フェアリィナ……)
 精霊神の名前は、確かそんな名前だったなと思い出しながら、エリオットはそのまま意識を失った。
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🐦‍⬛からすの後書きコーナー

…はい。
エリオくん流されてしまいました。
このシーンは最初から考えていた部分です。
流される運命のエリオくん……まだまだここからなんだよエリオくん……
次回はついに序幕ラストになると思います。
※1/5追記。完結になりませんでした🙄※
明日から大抵の会社は仕事始めとなりますが、烏守も続いて第一幕の執筆など頑張りつつお仕事にも励んで参ります。

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