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――心臓の鼓動、血の通った温かい手足の感覚で気が付く。
(生きてる……?)
錆び付いたようにうまく動かない指先を動かし、柔らかい布に触れると、ようやく今までどこか遠くに離れていた意識が一気に引き戻されたような感覚で、重い瞼を開けた。
視界にはよく手入れのされた乳白色の大理石模様の天井が見え、横たわっていた上体を起こした。
上体を起こすと、柔らかい掛け布団が腰元に落ちる。エリオットは寝台の上に居た。
「ここは……」
清潔感のある白い壁に、床には青と金の絨毯が敷かれている光景は、どこかで見た事があると感じた。
「ネジュアのフェアリィナ大神殿にある療養室です」
横から女性の声が聞こえ、エリオットは振り返る。
寝台の横にある椅子に、若い女性が座っていた。
以前、家族でネジュアに叔父を訪ねた時に何度か会った事がある、とエリオットは思い出した。
水神殿の司祭を務める叔父の補佐をしているドリスという名の巫女だ。
目が合うと、彼女は墨色の瞳でエリオットを見つめ返し、優しく微笑む。
「今、サードおじさまを呼んで来ますね」
彼女が部屋から去った後、エリオットは自分の状態を確認した。
手や足には包帯が巻かれ、治療の形跡がある。手足を動かそうとすると、体のあちこちが軋むようで、力が入らず、眩暈がしてエリオットは寝台に横になり、枕の上に頭を乗せてぼんやりと天井を見つめる。
そうしている内に、慌ただしい足音が近付いて来て、直後に部屋の扉が勢い良く開かれた。
「エリオット!」
祭服姿の神官は部屋の扉が開くや否や、寝台の上のエリオットに駆け寄り、両腕で抱き締める。
「サード叔父さん」
茶色の髪と優しい目元のその人は、父の双子の弟、叔父のサード・エスロイであった。
穏やかな印象の叔父は快活な目元と黒い髪の父とは真逆のように見えるが、同じ色の瞳をしていた。
仕事の途中で慌てて抜け出して来たのか、神官である事を表す白と青の祭服のままだ。
「良かった……三日も目を覚まさなかったんですよ」
「三日も?」
叔父は抱擁を解いて、潤 んだ目で頷いた。
「ええ。あのまま意識が戻らなかったら、危険な状態でした」
叔父は涙の溜まった目元を手で拭って微笑んで見せる。
「お腹が空いたでしょう。今、ドリスさんが粥 を用意していますから、待っていてくださいね」
叔父は椅子に座り、机の上にある水差しとコップを手に取って水を注ぎ、エリオットに渡す。
「見つかった時、あなたはバルシア近くの川のほとりで倒れていたそうです。水の精霊が守るように囲んでいた、と聞いています」
「精霊が……」
「水の精霊が宿った精霊石をずっと握って、離さなかったんです。無意識の内に、精霊を喚び出していたのでしょうね」
叔父はエリオットの寝台の横にある机の上に視線を落とす。視線の先には、水色の精霊石が置いてあり、微かな光を放っていた。
「そ、そうだ。みんなは? テロウ村はどうなったの」
エリオットは急に現実に引き戻されたようにテロウ村の事を思い出し、一気に押し寄せた不安に押し潰されそうになる。
「エリオット、落ち着いて」
叔父は椅子を離れ、過呼吸気味になるエリオットをなだめようと背をさする。
部屋の扉を叩く音が聞こえ、叔父は扉を開けに向かう。
「粥を持って来ました」
ドリスが木製のお盆に粥の入った小鍋と器を乗せ、部屋へ入って来る。
「エリオット、話の前に粥をいただきましょう。まずは食事をして、気持ちを落ち着かせてください」
ドリスは木製の器に温かい麦粥をよそい、鍋を下したお盆に乗せてエリオットに渡した。
麦の優しい香りが三日何も食べていなかった体の食欲を引き出す。
「……いただきます」
粥から立ち上る温かな湯気が、エリオットの鼻先を湿らせた。
匙で口に運び、喉を通る度に体中に粥の温かさが染み渡るようだった。
(生きてる……?)
錆び付いたようにうまく動かない指先を動かし、柔らかい布に触れると、ようやく今までどこか遠くに離れていた意識が一気に引き戻されたような感覚で、重い瞼を開けた。
視界にはよく手入れのされた乳白色の大理石模様の天井が見え、横たわっていた上体を起こした。
上体を起こすと、柔らかい掛け布団が腰元に落ちる。エリオットは寝台の上に居た。
「ここは……」
清潔感のある白い壁に、床には青と金の絨毯が敷かれている光景は、どこかで見た事があると感じた。
「ネジュアのフェアリィナ大神殿にある療養室です」
横から女性の声が聞こえ、エリオットは振り返る。
寝台の横にある椅子に、若い女性が座っていた。
以前、家族でネジュアに叔父を訪ねた時に何度か会った事がある、とエリオットは思い出した。
水神殿の司祭を務める叔父の補佐をしているドリスという名の巫女だ。
目が合うと、彼女は墨色の瞳でエリオットを見つめ返し、優しく微笑む。
「今、サードおじさまを呼んで来ますね」
彼女が部屋から去った後、エリオットは自分の状態を確認した。
手や足には包帯が巻かれ、治療の形跡がある。手足を動かそうとすると、体のあちこちが軋むようで、力が入らず、眩暈がしてエリオットは寝台に横になり、枕の上に頭を乗せてぼんやりと天井を見つめる。
そうしている内に、慌ただしい足音が近付いて来て、直後に部屋の扉が勢い良く開かれた。
「エリオット!」
祭服姿の神官は部屋の扉が開くや否や、寝台の上のエリオットに駆け寄り、両腕で抱き締める。
「サード叔父さん」
茶色の髪と優しい目元のその人は、父の双子の弟、叔父のサード・エスロイであった。
穏やかな印象の叔父は快活な目元と黒い髪の父とは真逆のように見えるが、同じ色の瞳をしていた。
仕事の途中で慌てて抜け出して来たのか、神官である事を表す白と青の祭服のままだ。
「良かった……三日も目を覚まさなかったんですよ」
「三日も?」
叔父は抱擁を解いて、
「ええ。あのまま意識が戻らなかったら、危険な状態でした」
叔父は涙の溜まった目元を手で拭って微笑んで見せる。
「お腹が空いたでしょう。今、ドリスさんが
叔父は椅子に座り、机の上にある水差しとコップを手に取って水を注ぎ、エリオットに渡す。
「見つかった時、あなたはバルシア近くの川のほとりで倒れていたそうです。水の精霊が守るように囲んでいた、と聞いています」
「精霊が……」
「水の精霊が宿った精霊石をずっと握って、離さなかったんです。無意識の内に、精霊を喚び出していたのでしょうね」
叔父はエリオットの寝台の横にある机の上に視線を落とす。視線の先には、水色の精霊石が置いてあり、微かな光を放っていた。
「そ、そうだ。みんなは? テロウ村はどうなったの」
エリオットは急に現実に引き戻されたようにテロウ村の事を思い出し、一気に押し寄せた不安に押し潰されそうになる。
「エリオット、落ち着いて」
叔父は椅子を離れ、過呼吸気味になるエリオットをなだめようと背をさする。
部屋の扉を叩く音が聞こえ、叔父は扉を開けに向かう。
「粥を持って来ました」
ドリスが木製のお盆に粥の入った小鍋と器を乗せ、部屋へ入って来る。
「エリオット、話の前に粥をいただきましょう。まずは食事をして、気持ちを落ち着かせてください」
ドリスは木製の器に温かい麦粥をよそい、鍋を下したお盆に乗せてエリオットに渡した。
麦の優しい香りが三日何も食べていなかった体の食欲を引き出す。
「……いただきます」
粥から立ち上る温かな湯気が、エリオットの鼻先を湿らせた。
匙で口に運び、喉を通る度に体中に粥の温かさが染み渡るようだった。
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1月6日更新予定
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まだ完結じゃなかったですーーー
そろそろ…とか言いながらまだ続くの~!?状態ですが、エリオットの序幕はこのシーンがないとだめだなと。
もう少しお付き合いください~~~_(:3」 ∠)_
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