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「それでいいの? あんたは」
レディは荒々しく音を立てて机に両手を付き、エリオットに問い掛ける。
机の上の食器は跳ね上がり、エリオットは甲高い食器の音に驚いて顔を上げた。
「エリオット、あなただってファズガル教団に復讐したいんでしょ。それでいいのかって訊いてるの!」
「いや、だってそれは――」
許可されていないから。
エリオットはそう続けようとしたが、レディは身を乗り出して顔を近付け、言葉を遮った。
「その気持ちに、誰かの許可なんているの?」
レディの問いにエリオットは心揺さぶられる。
だが、答える事ができなかった。
気持ちに素直に従うのなら、レディに協力する道が正しいのかもしれない。
しかし、仲介所が傭兵の実力に見合わない依頼を提供しないのは傭兵が無謀に命を散らさないためである。
ダークハンターは世間では「命知らずの傭兵」と呼ばれているが、それは実力を持つ者でさえ死亡率が高い所以 であり、魔物の中でも知性を持つ魔族との戦闘は殊更 危険で、仲介所、傭兵共に、慎重に計画を立てて対処しなければならない。
ファズガル教団は魔族と人の混血人で構成されており、戦闘においては純粋な魔族より劣るとはいえ、単純な魔物相手よりも厄介な事は明確である。
五年前、ファズガル教団の脅威を目の当たりにしたエリオットは、ダークハンターとして魔物を相手にしてから尚、彼らの脅威がどれほどのものか実感していた。
「俺も、ファズガル教団に一矢報いたいのが本心だよ。
……けど、一体どうするつもりなんだ? 俺も君も、仲介所に行ったところで断られるのは目に見えてるだろう」
仲介所の判断は賢明だ。
世の中は感情だけでうまく動きはしない。
「正規にお姉ちゃんを救出する作戦に参加する必要はないわ」
「えっ?」
エリオットは自信満々に話すレディを見て、目を丸くした。
単独で行くにしても、よほどの能力と計画が無ければ無謀だからだ。
これまでの言動から、勢いや思い付きで行動しそうな目の前の少女がそこまで考えているようには見えなかった。
エリオットの疑いの眼差しに気付き、レディはむっとしてエリオットの鼻先に人差し指をあてた。
「とにかくねぇ、あんたはまず、あたしをダークハンターに推薦するだけでいいの。話はそこからよ」
レディは腰に手をあて、隣で狼狽していたドリスに「部屋に案内して」と催促してから、エリオットに振り返って言う。
「司祭様から明日は街を見て回る時間をもらってるの。その時にあんたが案内役を買って出てくれたら、今の話を了承したと受け止めるわ。明日までによーく考えておいてよね」
そうして、レディはドリスと共に食堂を去る。
いつの間にか食堂にいた神官達の姿も無く、一人残されたエリオットは手元に残っていた冷めきってしまったスープを覗きながら考え込んだ。
思い出すのはテロウ村でファズガル教団に殺された村人達、ファズガル教団と対峙していた父と、白の外套の青年の姿、そして親友の最後。
エリオットは目を強く閉じる。
『その気持ちに、誰かの許可なんているの?』
レディの強い問い掛けが頭の中で反芻 される。
(俺は逃げているのか?)
叔父にダークハンターになる事を止められ、仲介所にはファズガル教団の関わる依頼の参加を止められ、それは自分にファズガル教団に立ち向かえる実力がないからだと言い聞かせ、本当はファズガル教団が恐ろしくて逃げていただけではないのだろうか。
本気で復讐を考えているのなら、仲介所を通さずとも、戦う術を身につけるよりも、自分なりにファズガル教団に対抗する術を調べ、行動したのではないだろうか?
エリオットは答えを出せないまま、冷めたスープに口を付け、食事を終わらせた。
レディは荒々しく音を立てて机に両手を付き、エリオットに問い掛ける。
机の上の食器は跳ね上がり、エリオットは甲高い食器の音に驚いて顔を上げた。
「エリオット、あなただってファズガル教団に復讐したいんでしょ。それでいいのかって訊いてるの!」
「いや、だってそれは――」
許可されていないから。
エリオットはそう続けようとしたが、レディは身を乗り出して顔を近付け、言葉を遮った。
「その気持ちに、誰かの許可なんているの?」
レディの問いにエリオットは心揺さぶられる。
だが、答える事ができなかった。
気持ちに素直に従うのなら、レディに協力する道が正しいのかもしれない。
しかし、仲介所が傭兵の実力に見合わない依頼を提供しないのは傭兵が無謀に命を散らさないためである。
ダークハンターは世間では「命知らずの傭兵」と呼ばれているが、それは実力を持つ者でさえ死亡率が高い
ファズガル教団は魔族と人の混血人で構成されており、戦闘においては純粋な魔族より劣るとはいえ、単純な魔物相手よりも厄介な事は明確である。
五年前、ファズガル教団の脅威を目の当たりにしたエリオットは、ダークハンターとして魔物を相手にしてから尚、彼らの脅威がどれほどのものか実感していた。
「俺も、ファズガル教団に一矢報いたいのが本心だよ。
……けど、一体どうするつもりなんだ? 俺も君も、仲介所に行ったところで断られるのは目に見えてるだろう」
仲介所の判断は賢明だ。
世の中は感情だけでうまく動きはしない。
「正規にお姉ちゃんを救出する作戦に参加する必要はないわ」
「えっ?」
エリオットは自信満々に話すレディを見て、目を丸くした。
単独で行くにしても、よほどの能力と計画が無ければ無謀だからだ。
これまでの言動から、勢いや思い付きで行動しそうな目の前の少女がそこまで考えているようには見えなかった。
エリオットの疑いの眼差しに気付き、レディはむっとしてエリオットの鼻先に人差し指をあてた。
「とにかくねぇ、あんたはまず、あたしをダークハンターに推薦するだけでいいの。話はそこからよ」
レディは腰に手をあて、隣で狼狽していたドリスに「部屋に案内して」と催促してから、エリオットに振り返って言う。
「司祭様から明日は街を見て回る時間をもらってるの。その時にあんたが案内役を買って出てくれたら、今の話を了承したと受け止めるわ。明日までによーく考えておいてよね」
そうして、レディはドリスと共に食堂を去る。
いつの間にか食堂にいた神官達の姿も無く、一人残されたエリオットは手元に残っていた冷めきってしまったスープを覗きながら考え込んだ。
思い出すのはテロウ村でファズガル教団に殺された村人達、ファズガル教団と対峙していた父と、白の外套の青年の姿、そして親友の最後。
エリオットは目を強く閉じる。
『その気持ちに、誰かの許可なんているの?』
レディの強い問い掛けが頭の中で
(俺は逃げているのか?)
叔父にダークハンターになる事を止められ、仲介所にはファズガル教団の関わる依頼の参加を止められ、それは自分にファズガル教団に立ち向かえる実力がないからだと言い聞かせ、本当はファズガル教団が恐ろしくて逃げていただけではないのだろうか。
本気で復讐を考えているのなら、仲介所を通さずとも、戦う術を身につけるよりも、自分なりにファズガル教団に対抗する術を調べ、行動したのではないだろうか?
エリオットは答えを出せないまま、冷めたスープに口を付け、食事を終わらせた。
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6月13日更新予定
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エリオットの苦悩は自分の時々思う事をちょっと反映していて…
「こうしたい気持ちがあるなら、もっと行動するべきでは?」と思う事が多々ありまして。
でも、まず何をしたらいいか分からなかったり、他人に頼る事を失念していたり、守られる立場でいる事でその環境に甘えてしまったり…という状況が多々あるよなぁと。
エリオットも過去のトラウマがあって、復讐を誓いながらも環境任せにしていた部分や他人に助けを求める事に消極的な傾向があります。
果たしてエリオットが選ぶ道は…?
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