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「ふむ……噂にある稀代の水鏡の巫女か」
ゾウェインは目を細める。
「教団は巫女の未来視と探知の能力を利用するつもりなのでしょう。五年前の事もあります。放っておくのは危険だと判断致しました。どうかご指示を」
五年前、と聞いてリヌは剣を磨いていた手を止め、ネイカーもその言葉に反応する。
「五年前といえば、リヴァのヤツが嘘ついてゾウェを怒らせた事件のことか?」
五年前のファズガル教団がテロウ村を襲った事件は、数百年の歴史がある魔竜軍にとっても辛酸 を舐 める出来事だった。
世間では魔竜軍と共にファズガル教団がテロウ村を襲い、猛威を振るったと広まっているが、ゾウェイン達は教団の策略により魔竜の名と魔竜軍の脅威をいいように使われたのである。
「忌々 しい」
レオナは吐き捨てるように呟いた。
レオナはネイカーを鋭く睨んだが、それはゾウェインの名前を省略した事に対する意味も含まれてはいたものの、最たる理由はリヴァという名前がその口から出たからであった。
リヴァはファズガル教団を興した人物である。
元はイカルノ家同様に古くから魔竜軍に属していた魔族だったが、人間と適度な距離を保ってきた魔竜軍の方針に不満を呈 し、軍の魔族を引き抜いて革命と称して魔族の活動範囲を拡大するためにファズガルの名を使い、現在に至るまで侵略行為を繰り返している。
五年前の事件を切っ掛けにファズガル教団による侵略行為は激化しており、魔竜軍は隠密裏 に教団の侵略行為を防ぐため、軍を派遣していた。
ネイカーは凍り付くような空気に気付き、自分がまずい発言をしてしまったと居たたまれずそわそわと忙しなく動き出す。
「教団の目的は早々に摘む必要があります。ファズガル様、どうか出撃命令を」
レオナはゾウェインに指示を求める。
「そうだな……あれは我の管理不行き届きが招いたこと。再び被害を広げるわけには行くまい。直ちに軍を向かわせ、教団から巫女を解放せよ」
「御意」
レオナは微笑み、胸に手を当てて頷いて見せる。横ではネイカーがその動作を真似、ゾウェインは表情を和らげた。
「お前達にはいつも苦労をかけるな」
「いいって! ゾウェ様が悪くないのは今の魔竜軍のみんなは分かってんだからさ」
ネイカーは口を大きく開けて屈託ない笑みを浮かべ、大袈裟に手を振る。
先程の凍り付いた空気に耐えられなかったのか、今度はゾウェインの名を省略しつつも敬称を付けていたが、レオナに尊い名前を省略するなと再び睨み付けられる。
ゾウェインは扉の横の柱にもたれ掛かるリヌに視線をやる。
「リヌ、お前も共に行け。結界の影響を受けぬ者が行けば他の者も安心できる。レオナの言う通り、たまには外出するのも悪くないだろう」
あの会話を聞いていたのか、とレオナは顔を真っ赤にして、やり場のない気持ちに口元をぱくぱくと小刻みに動かす。
リヌは顔を上げて深紅の瞳を視線の先に返した後、頷く代わりに静かに目を閉じる。
「……了解」
リヌは返事をした後、大剣を術で収納すると、立ち上がってすぐに廊下の向こうへと立ち去った。
レオナは打ち合わせもせず行ってしまったリヌの背中を見て苛 立ちを感じ、へらへらと笑うネイカーに顔を向けて怒鳴りつけた。
「ネイカー! ぼうっとしてないで、移動用の飛竜を用意しなさい。アンタの担当でしょうが!」
「はいはい、わかりましたよーっと」
ゾウェインは目を細める。
「教団は巫女の未来視と探知の能力を利用するつもりなのでしょう。五年前の事もあります。放っておくのは危険だと判断致しました。どうかご指示を」
五年前、と聞いてリヌは剣を磨いていた手を止め、ネイカーもその言葉に反応する。
「五年前といえば、リヴァのヤツが嘘ついてゾウェを怒らせた事件のことか?」
五年前のファズガル教団がテロウ村を襲った事件は、数百年の歴史がある魔竜軍にとっても
世間では魔竜軍と共にファズガル教団がテロウ村を襲い、猛威を振るったと広まっているが、ゾウェイン達は教団の策略により魔竜の名と魔竜軍の脅威をいいように使われたのである。
「
レオナは吐き捨てるように呟いた。
レオナはネイカーを鋭く睨んだが、それはゾウェインの名前を省略した事に対する意味も含まれてはいたものの、最たる理由はリヴァという名前がその口から出たからであった。
リヴァはファズガル教団を興した人物である。
元はイカルノ家同様に古くから魔竜軍に属していた魔族だったが、人間と適度な距離を保ってきた魔竜軍の方針に不満を
五年前の事件を切っ掛けにファズガル教団による侵略行為は激化しており、魔竜軍は
ネイカーは凍り付くような空気に気付き、自分がまずい発言をしてしまったと居たたまれずそわそわと忙しなく動き出す。
「教団の目的は早々に摘む必要があります。ファズガル様、どうか出撃命令を」
レオナはゾウェインに指示を求める。
「そうだな……あれは我の管理不行き届きが招いたこと。再び被害を広げるわけには行くまい。直ちに軍を向かわせ、教団から巫女を解放せよ」
「御意」
レオナは微笑み、胸に手を当てて頷いて見せる。横ではネイカーがその動作を真似、ゾウェインは表情を和らげた。
「お前達にはいつも苦労をかけるな」
「いいって! ゾウェ様が悪くないのは今の魔竜軍のみんなは分かってんだからさ」
ネイカーは口を大きく開けて屈託ない笑みを浮かべ、大袈裟に手を振る。
先程の凍り付いた空気に耐えられなかったのか、今度はゾウェインの名を省略しつつも敬称を付けていたが、レオナに尊い名前を省略するなと再び睨み付けられる。
ゾウェインは扉の横の柱にもたれ掛かるリヌに視線をやる。
「リヌ、お前も共に行け。結界の影響を受けぬ者が行けば他の者も安心できる。レオナの言う通り、たまには外出するのも悪くないだろう」
あの会話を聞いていたのか、とレオナは顔を真っ赤にして、やり場のない気持ちに口元をぱくぱくと小刻みに動かす。
リヌは顔を上げて深紅の瞳を視線の先に返した後、頷く代わりに静かに目を閉じる。
「……了解」
リヌは返事をした後、大剣を術で収納すると、立ち上がってすぐに廊下の向こうへと立ち去った。
レオナは打ち合わせもせず行ってしまったリヌの背中を見て
「ネイカー! ぼうっとしてないで、移動用の飛竜を用意しなさい。アンタの担当でしょうが!」
「はいはい、わかりましたよーっと」
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7月11日更新予定
7月11日更新予定
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🐦⬛からすの後書きコーナー
水鏡の巫女リュチアを巡って魔竜軍も動き出す……な展開となりました。
世間的にはファズガル教団と魔竜軍は手を組んでいると誤解されていますが、魔竜軍はファズガルの名を騙る教団に対して必要以上に干渉しないが利用している面もあるという位置関係です。
ファズガル教団の教主は元魔竜軍のリヴァ。
魔竜軍とファズガル教団の関係の掘り下げはもっと後になりそう。
リヌも何やら五年前の事件に因縁があるようです…?
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