神殿を出ると、レディは途端に態度を変えてエリオットに振り返り勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「――で。協力してくれる気になったのね?」
そう言った彼女の目はまるで「昨日はあんなに否定的だったのに」とでも言いた気である。
「俺の考えは昨日と変わらないよ」
「……どういうことよ?」
エリオットは溜息を吐いた。
「君がダークハンターになるのは構わない。でも、単独でファズガル教団からお姉さんを救いに向かう事に関しては協力できない。どうにかして仲介所に掛け合って、作戦に参加させてもらおう。それなら俺も君に協力する。……そういう事だよ」
それが最適解だ、とエリオットは主張するが、レディは納得がいかない様子で腕を組み、息巻く。
「なによ! いい子ちゃんぶって。あんたは軽く〝どうにかして〟なんて言ってくれるけど、あのつるっぱげが許可してくれるとでも思ってるわけ?」
つるっぱげ、というのは仲介所職員チェルシーの事だろう。
レディはよほどあの時の事が癪 に触ったようで、そこだけ憎しみが込められ、強調されていた。
「君は誤解してるんじゃないか」
「誤解ですって?」
エリオットは面倒くさいな、と、もともと寝癖のついた後頭部の髪を手のひらでくしゃくしゃにする。
「チェルシーさんは元とは言え、熟練のダークハンターだ。人が容易く命を落としたり、大怪我をする事に反対するのは当然だし、君がダークハンターの試験を受けていない所を見るに、まだ君の能力がどれくらいかも見せてすらいないんだろう?」
レディはチェルシーに言われた言葉を思い出し、眉間に皺を寄せ、両手を強く握り締めてエリオットを睨んだ。
「それはつるっぱげが頭ごなしに、あたしが巫女だから無理だ! って言うから……!」
「少し考えてほしいんだけど、その時、君は冷静だったか? チェルシーさんは君に落ち着いてほしくて、そんな風に言ったんじゃないか?」
「あたしが悪いって言うの?」
レディは自分が敵と見なした相手の肩を持つエリオットが気に入らず、機嫌悪く言った。
「そうじゃない。お姉さんを助けたくて焦っていたのは仕方がないよ。俺も大切な人が危険な状態に置かれていたら、冷静で、いられなくなると……思う」
「……」
エリオットは不意に苦い表情を浮かべ、言葉を詰まらせた。五年前の出来事を自分の言葉から思い出してしまったのだろう。
レディはそれに気付き、咄嗟 に反発の言葉が出そうだった口を噤 んだ。
「あのさ。チェルシーさんはキツいことを言ったかもしれないけど、君のことを心配してたんだよ。君に冷静になってほしかったんだと思う」
「つるっぱげが?」
レディは反発心から、信じられない、と眉を釣り上げるも、困ったような、複雑な表情を見せた。
「考え直してくれないか? 仲介所が存在するのは傭兵達の命を守るためでもあるんだ」
さっきまでエリオットの目を真っ直ぐ見ようとしなかったレディは少し態度を和らげ、エリオットと目を合わせて話を聞く姿勢を見せる。
これなら説得も通用するのではないか、とエリオットはしっかりとした口調で続けた。
「仲介所は情報を集めて最適な人員配備を行う。既に依頼書が手配されているなら、君が一人で突っ込んで行ったところで互いに足を引っ張って、お姉さんの救出どころか、君や傭兵が犠牲になる可能性だってある。だったら、元から互いに協力したほうがいいだろ?」
レディはエリオットの話に納得する事で自分が負けたような気がして声を低くして話し、口先を尖 らせる。
「まあ……そうね、あたしがまたあのつるっぱげと話すのは気が乗らないけど、あんたが交渉してくれるっていうなら考えなくもないわ」
レディの出した答えに、エリオットは優しく笑みを浮かべる。レディはその反応にむっとして付け加えた。
「言っとくけど! それでも反対された時には、あたしは一人でだってお姉ちゃんを助けに行くから!」
「君としては大きな譲歩のようだから、それでいいよ。俺もファズガル教団が関わる作戦には参加したいから、どうにか交渉してみるさ」
「そう? それじゃ、目の前のダークハンターさんに期待してもいいのかしら」
ふふん、とレディは鼻で笑って、顎を持ち上げてエリオットに挑発的な笑みを送る。
「俺も未来の自分に期待したいね」
エリオットは協力関係の成立に、その挑発に乗ってやろうじゃないか、とばかりに白い歯を見せて笑う。
そのやり取りに二人の間にあった緊張が一気に解けたのか、くすくすと顔を見合わせて笑い合った。
「――で。協力してくれる気になったのね?」
そう言った彼女の目はまるで「昨日はあんなに否定的だったのに」とでも言いた気である。
「俺の考えは昨日と変わらないよ」
「……どういうことよ?」
エリオットは溜息を吐いた。
「君がダークハンターになるのは構わない。でも、単独でファズガル教団からお姉さんを救いに向かう事に関しては協力できない。どうにかして仲介所に掛け合って、作戦に参加させてもらおう。それなら俺も君に協力する。……そういう事だよ」
それが最適解だ、とエリオットは主張するが、レディは納得がいかない様子で腕を組み、息巻く。
「なによ! いい子ちゃんぶって。あんたは軽く〝どうにかして〟なんて言ってくれるけど、あのつるっぱげが許可してくれるとでも思ってるわけ?」
つるっぱげ、というのは仲介所職員チェルシーの事だろう。
レディはよほどあの時の事が
「君は誤解してるんじゃないか」
「誤解ですって?」
エリオットは面倒くさいな、と、もともと寝癖のついた後頭部の髪を手のひらでくしゃくしゃにする。
「チェルシーさんは元とは言え、熟練のダークハンターだ。人が容易く命を落としたり、大怪我をする事に反対するのは当然だし、君がダークハンターの試験を受けていない所を見るに、まだ君の能力がどれくらいかも見せてすらいないんだろう?」
レディはチェルシーに言われた言葉を思い出し、眉間に皺を寄せ、両手を強く握り締めてエリオットを睨んだ。
「それはつるっぱげが頭ごなしに、あたしが巫女だから無理だ! って言うから……!」
「少し考えてほしいんだけど、その時、君は冷静だったか? チェルシーさんは君に落ち着いてほしくて、そんな風に言ったんじゃないか?」
「あたしが悪いって言うの?」
レディは自分が敵と見なした相手の肩を持つエリオットが気に入らず、機嫌悪く言った。
「そうじゃない。お姉さんを助けたくて焦っていたのは仕方がないよ。俺も大切な人が危険な状態に置かれていたら、冷静で、いられなくなると……思う」
「……」
エリオットは不意に苦い表情を浮かべ、言葉を詰まらせた。五年前の出来事を自分の言葉から思い出してしまったのだろう。
レディはそれに気付き、
「あのさ。チェルシーさんはキツいことを言ったかもしれないけど、君のことを心配してたんだよ。君に冷静になってほしかったんだと思う」
「つるっぱげが?」
レディは反発心から、信じられない、と眉を釣り上げるも、困ったような、複雑な表情を見せた。
「考え直してくれないか? 仲介所が存在するのは傭兵達の命を守るためでもあるんだ」
さっきまでエリオットの目を真っ直ぐ見ようとしなかったレディは少し態度を和らげ、エリオットと目を合わせて話を聞く姿勢を見せる。
これなら説得も通用するのではないか、とエリオットはしっかりとした口調で続けた。
「仲介所は情報を集めて最適な人員配備を行う。既に依頼書が手配されているなら、君が一人で突っ込んで行ったところで互いに足を引っ張って、お姉さんの救出どころか、君や傭兵が犠牲になる可能性だってある。だったら、元から互いに協力したほうがいいだろ?」
レディはエリオットの話に納得する事で自分が負けたような気がして声を低くして話し、口先を
「まあ……そうね、あたしがまたあのつるっぱげと話すのは気が乗らないけど、あんたが交渉してくれるっていうなら考えなくもないわ」
レディの出した答えに、エリオットは優しく笑みを浮かべる。レディはその反応にむっとして付け加えた。
「言っとくけど! それでも反対された時には、あたしは一人でだってお姉ちゃんを助けに行くから!」
「君としては大きな譲歩のようだから、それでいいよ。俺もファズガル教団が関わる作戦には参加したいから、どうにか交渉してみるさ」
「そう? それじゃ、目の前のダークハンターさんに期待してもいいのかしら」
ふふん、とレディは鼻で笑って、顎を持ち上げてエリオットに挑発的な笑みを送る。
「俺も未来の自分に期待したいね」
エリオットは協力関係の成立に、その挑発に乗ってやろうじゃないか、とばかりに白い歯を見せて笑う。
そのやり取りに二人の間にあった緊張が一気に解けたのか、くすくすと顔を見合わせて笑い合った。
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8月1日更新予定
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🐦⬛からすの後書きコーナー
ようやくヒロインとの和解です。
苛烈で挑発的で火の玉や嵐のようなレディちゃんですが、これからどんどん活躍させて可愛いところもどんどん見せていきます!
いわゆる生意気な小娘、小憎たらしい小娘ポジションって、からす的には結構好きです。
危なっかしいところもあって放っておけないシチュエーションとか好きなので、ちょいちょい入れたいかも…
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