?[ON]にすると字下げがなくなり行間が広がります
「キリニウスく~ん?」
聖騎士の鎧を着た、赤茶色の短いボブヘアーの筋肉質な女性がキリーの名を呼びながら向こうから駆け足でやって来る。
キリーはその声に首だけ振り返り、彼女の姿を見るなり「げ」と声を上げ、気まずい表情を見せた。
「じゃ、じゃあ俺は持ち場に戻るから――」
キリーはさり気なく逃げようと試みたようだが、想像以上に向かって来たその人物の足は速く、キリーは後ろから力強く首当てを引っ掴まれ、片足を上げたまま動きを止めた。
「キリニウス! また君は、かわいい子を見つける度に巡回をサボって! いい加減、上に報告するよ?」
そばかすに赤毛のボブヘアーと澄んだ水色の瞳、そして筋肉質でがっしりとした体型に成人前を思わせる幼い印象の愛らしい顔立ちをした彼女は、聖騎士のミーシア・アマルーシュである。
彼女はエリオットらと同い年の十七歳と若いが、現在はキリーの属するテテロトキスの周辺警備を任された小隊の隊長を務めている。
彼女も神学校の同期で、規律厳守の優等生だったミーシアと自由人のキリーは今も昔も変わらず水と油のような関係のようだ。
ミーシアの口振りでさっきのキリーの冗談がただの言い訳だった事を知り、エリオットは責める眼差しでキリーを一瞥する。
「あれっ? エリオットじゃない」
ミーシアは首を引っ込めて視線を逸らしたキリーの態度でようやくエリオットの存在に気付いたようで、驚いた様子で顔を上げた。
「ごめんね、キリニウスにはよーく言い聞かせておくから」
「よろしく頼むよ、ミーシア」
神学校時代もミーシアは騎士科の代表として教師の代わりにキリーを諌 めており、エリオットからしても頼りになる存在であった。
腕っぷしと体力においてはエリオットやキリーよりもミーシアのほうが優れており、味方なら心強いが敵にすれば非常に恐ろしい人物だろう。
「ところで、そっちの子は見ない顔だけど……もしかして、噂の研修巫女?」
ミーシアを含む聖騎士の大半も神官と同じ神殿寮住まいではあるが神官とは勤務形態が異なるため、昨晩の食堂であった集会には未参加だったはずなのだが、ミーシアは巫女装束を作り変えたレディの服装をひと目見ただけで言い当てた。
「ああ。初日だからって、街の案内を頼まれたんだ」
「なるほどね」
ミーシアはキリーから手を離してレディに向き直り、上品な所作で胸と腰に手を添えた騎士の正当な挨拶を見せる。
「私は水神殿、聖騎士団第三小隊長ミーシア・アマルーシュ。ネジュアは川も海も水の精霊が豊かにいる場所だから、きっとすぐ気に入ると思うよ」
騎士の正当な挨拶に対し、レディは巫女の挨拶としてスカートの裾を持ち上げる動作をして名乗った。
「あたしはレティアローから来た精霊巫女、レディ・シャルアローよ」
「へぇ! シャルアローっていえば、精霊巫女の名家じゃないか!」
シャルアローと聞いて、ミーシアは途端に目を輝かせ、レディに握手を求めた。
ミーシアは精霊神話の愛好家で、精霊神教の歴史に関する知識には貪欲 なのだ。
アマルーシュ家は信心深く、代々精霊神殿の聖騎士を務める家系であるのだが、神学校時代に誰よりも成績が良かったのはミーシアが信心深いからというよりは、精霊神教についての探求心によるものだった、と言ったほうが正しく聞こえる。
シャルアロー家は特にフェアリィナ神の子孫と云われているだけあって、ミーシアの探求心に火をつけたようだ。
「もし今度時間があれば、レティアローの水神殿について聞きたいな! 私は休みの日には神殿寮にいるから……えっと、そうだな」
ミーシアはと腰に装着している小さな携帯鞄から用紙一枚と筆を取り出し、部屋番号と休暇日、よく部屋にいる時間を書いてレディに渡す。
「はい。この時間に気が向いたら訪ねて来てよ。他にも神殿で困った事があったら言って」
「ありがとう、ミーシアさん」
レディは本心から嬉しそうに微笑んで、ミーシアから渡された用紙を両手で受け取った。
エリオットもその様子を見て、自然と笑顔になる。
キリーはいつの間にかエリオット達から離れ、自分の持ち場に戻って行ったようで、ミーシアの肩越しに豆粒ほどしか見えなくなっていた。
エリオットがキリーの行方を気にした視線からか、ミーシアは振り返ってキリーの姿を捉え、姿勢を正す。
「さて。じゃあ、私も巡回に戻るよ。精霊の加護を」
三人は片手で軽く別れの挨拶をして解散した。
聖騎士の鎧を着た、赤茶色の短いボブヘアーの筋肉質な女性がキリーの名を呼びながら向こうから駆け足でやって来る。
キリーはその声に首だけ振り返り、彼女の姿を見るなり「げ」と声を上げ、気まずい表情を見せた。
「じゃ、じゃあ俺は持ち場に戻るから――」
キリーはさり気なく逃げようと試みたようだが、想像以上に向かって来たその人物の足は速く、キリーは後ろから力強く首当てを引っ掴まれ、片足を上げたまま動きを止めた。
「キリニウス! また君は、かわいい子を見つける度に巡回をサボって! いい加減、上に報告するよ?」
そばかすに赤毛のボブヘアーと澄んだ水色の瞳、そして筋肉質でがっしりとした体型に成人前を思わせる幼い印象の愛らしい顔立ちをした彼女は、聖騎士のミーシア・アマルーシュである。
彼女はエリオットらと同い年の十七歳と若いが、現在はキリーの属するテテロトキスの周辺警備を任された小隊の隊長を務めている。
彼女も神学校の同期で、規律厳守の優等生だったミーシアと自由人のキリーは今も昔も変わらず水と油のような関係のようだ。
ミーシアの口振りでさっきのキリーの冗談がただの言い訳だった事を知り、エリオットは責める眼差しでキリーを一瞥する。
「あれっ? エリオットじゃない」
ミーシアは首を引っ込めて視線を逸らしたキリーの態度でようやくエリオットの存在に気付いたようで、驚いた様子で顔を上げた。
「ごめんね、キリニウスにはよーく言い聞かせておくから」
「よろしく頼むよ、ミーシア」
神学校時代もミーシアは騎士科の代表として教師の代わりにキリーを
腕っぷしと体力においてはエリオットやキリーよりもミーシアのほうが優れており、味方なら心強いが敵にすれば非常に恐ろしい人物だろう。
「ところで、そっちの子は見ない顔だけど……もしかして、噂の研修巫女?」
ミーシアを含む聖騎士の大半も神官と同じ神殿寮住まいではあるが神官とは勤務形態が異なるため、昨晩の食堂であった集会には未参加だったはずなのだが、ミーシアは巫女装束を作り変えたレディの服装をひと目見ただけで言い当てた。
「ああ。初日だからって、街の案内を頼まれたんだ」
「なるほどね」
ミーシアはキリーから手を離してレディに向き直り、上品な所作で胸と腰に手を添えた騎士の正当な挨拶を見せる。
「私は水神殿、聖騎士団第三小隊長ミーシア・アマルーシュ。ネジュアは川も海も水の精霊が豊かにいる場所だから、きっとすぐ気に入ると思うよ」
騎士の正当な挨拶に対し、レディは巫女の挨拶としてスカートの裾を持ち上げる動作をして名乗った。
「あたしはレティアローから来た精霊巫女、レディ・シャルアローよ」
「へぇ! シャルアローっていえば、精霊巫女の名家じゃないか!」
シャルアローと聞いて、ミーシアは途端に目を輝かせ、レディに握手を求めた。
ミーシアは精霊神話の愛好家で、精霊神教の歴史に関する知識には
アマルーシュ家は信心深く、代々精霊神殿の聖騎士を務める家系であるのだが、神学校時代に誰よりも成績が良かったのはミーシアが信心深いからというよりは、精霊神教についての探求心によるものだった、と言ったほうが正しく聞こえる。
シャルアロー家は特にフェアリィナ神の子孫と云われているだけあって、ミーシアの探求心に火をつけたようだ。
「もし今度時間があれば、レティアローの水神殿について聞きたいな! 私は休みの日には神殿寮にいるから……えっと、そうだな」
ミーシアはと腰に装着している小さな携帯鞄から用紙一枚と筆を取り出し、部屋番号と休暇日、よく部屋にいる時間を書いてレディに渡す。
「はい。この時間に気が向いたら訪ねて来てよ。他にも神殿で困った事があったら言って」
「ありがとう、ミーシアさん」
レディは本心から嬉しそうに微笑んで、ミーシアから渡された用紙を両手で受け取った。
エリオットもその様子を見て、自然と笑顔になる。
キリーはいつの間にかエリオット達から離れ、自分の持ち場に戻って行ったようで、ミーシアの肩越しに豆粒ほどしか見えなくなっていた。
エリオットがキリーの行方を気にした視線からか、ミーシアは振り返ってキリーの姿を捉え、姿勢を正す。
「さて。じゃあ、私も巡回に戻るよ。精霊の加護を」
三人は片手で軽く別れの挨拶をして解散した。
次のページ:第一幕〈21〉≫
8月22日更新予定
8月22日更新予定
ADスペース
🐦⬛からすの後書きコーナー
ミーシア、可愛い子です。
からすの思い描くそばかすありのキャラは大体かわいい子です。
可愛いけど筋肉質……ちょっと自分でイラストにできるか分かりませんが、いずれ描いてみたいです。ボブヘアーっておかっぱをイメージしてるんですが、他にどんな表現をすればいいか戸惑っているし、自分の思い描くボブヘアーよりも彼女に似合うボブヘアーがあるかもしれないなぁと、このあたりは読者の想像に任せたい気持ちもあります。
むさくるしくなりがちなので女の子キャラが増えるのは嬉しい(かと言って増えすぎも逆にギャルゲか!みたいになるのでバランスよくいきたい)
コメントを投稿
ご感想をどうぞ!
お問合せはSilverPostかメールまでお願いします