⚠注意⚠
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ランプの油でも落としたのだろうかと、エリオットは進みながら液体が流れて来る階段の上へ視線をやると、ファズガル教団の黒衣をまとった死体が階段の真ん中に仰向けで倒れていた。
黒紫色の液体は教団員の血液のようだった。
教団員の背には
(人間じゃない)
エリオットは、本で読んだ魔族のようだと思った。
……しかし、魔族であれば簡単にテロウ村を囲むハナトキの森を抜ける事はできないはずだ。
壁の精霊灯の弱々しい明かりに照らされ、ぬらぬらと光りながら階段を流れていく紫色の血液はまだ傷口から溢れ出ており、
踏まないように注意しながらエリオットは階段の端を上る。
少し上がった階段の壁際に子供が二人、折り重なるようにして倒れていた。
「うっ……」
近付いて見ると、刃物で喉を切り裂かれている。
この二人とは何度も遊んだ事があった。ワイズは木を削って物を作るのが上手かったし、ネブラは絵を描くのが大好きだった。
もう動く事はない二人の影に思い出を重ね、エリオットは息が詰まる思いで目に涙を溜めながら階段をゆっくり上る。
上階の部屋からは激しい剣戟の音が絶え間なく響き続けている。
階段の上の通路に、苦しそうな表情を浮かべ壁に寄りかかるハイルの姿が見えた。
「ハイル」
エリオットは小声で声を掛ける。
ハイルはエリオットに気付き、困ったように眉を下げた。
「エリオットまで……」
エリオットは身を低くして部屋の窓を避け、ハイルに駆け寄る。
ハイルの体には白い布で応急処置の跡があるものの、左肩から胸部にかけて血が滲んでいた。
「ダメじゃないか、エリオット。今ならまだ間に合う。村へ戻って、みんなと逃げて。このままじゃ、村も危ないって、みんなに伝えてよ」
ハイルの言葉は息を吐くついでに口から出るように途切れ途切れだった。
激しい剣戟の音が鳴り響き、窓から射し込んでいた部屋の明かりが消える。白い外套が窓を塞いでいた。
ヴァイスが敵の攻撃を防ぎ、態勢を崩して壁際へと追いやられていた。
ヴァイスは剣で敵の斬撃を弾き返し、窓から離れる。
エリオットは窓の横から、そっと部屋の中の様子を窺う。
部屋の中にはヴァイスと二人の黒衣の教団員が戦っており、父は銀の拳銃を構え、ジェイの首を鷲掴みにしている二メートル以上ある巨体の教団員を相手に睨み合っていた。
(兄ちゃんは……?)
見える範囲に、兄の姿は無い。
ジェイを追って行ったのだから、近くに姿が見えても良いはずだった。
窓から覗いた範囲に倒れている子供と傭兵数人の姿が見えるが、血だらけで生きている様子は見られない。
一瞬、兄もその中に含まれているのではないかという考えが脳裏を過り、その考えを振り払うように、エリオットは頭を横に振る。
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許すまじファズガル教団…
ファズガル教団の人物を「黒衣」とだけ表現していましたが「教団員」で落ち着ける事にしました。
黒衣の人物、とも書いていたんですが、毎回それだと長いし分かりにくいなーと。
小説っていかにその状況を文章で分かりやすく伝えるかだと思うんですけど、いつもああでもないこうでもないってなってます。
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