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2026-09-27

Dark Hunter / 第一幕〈25〉

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 炎の渦が収まると、召喚された火の精霊アルガスはくるりと宙を舞って姿を消した。

「しかもこの威力、加護持ちね……?」
「そうよ。これであたしに戦えるだけの力があるって分かったでしょ?」
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2026-09-20

Dark Hunter / 第一幕〈24〉

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 受付の隣にある細い通路の突き当りにある扉を開けて仲介所の裏手に出ると、試験や修練に使われる広場がある。
 広場は隣接する建物を遮るように黒茶色の高い塀で囲われ、塀を繋ぐ柱には丸く黄緑色の石が埋め込まれている。
 これは周辺への影響を防ぐための設備で、塀は術や衝撃を防ぐ頑丈な魔鉄で造られており、柱にある石は風の精霊術を利用した魔道具で、魔力を注いで発動すると飛び道具の外部への飛散防止と防音の効果が得られる仕組みだ。
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2026-09-05

Dark Hunter / 第一幕〈23〉

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「この条件を破ればダークハンターの資格は剥奪よ」
 ダークハンターの資格が剥奪された場合、三年以内の再取得ができない決まりになっている。
 条件を聞いたエリオットの表情は曇った。
「アナタたちに、この条件が呑める?」

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2026-08-29

Dark Hunter / 第一幕〈22〉

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 エリオットとレディはチェルシーの言葉に顔を見合わせる。
「それじゃあ……?」
 二人は前向きな答えを期待してチェルシーの深い紫色の瞳を見つめ、言葉を待った。
 チェルシーは不本意そうに複雑な笑みを浮かべた。
「ボス曰(いわ)く――〝今回はあくまでも救出作戦であり、教団の討伐を目的としない。よって、熟練と認められた資格者の下であれば新米二名までの参加を許可する〟とのことよ」

 数秒の沈黙。
 まだ言葉の意味を呑み込めずにいる二人に、チェルシーは「つまり」と続ける。
「アナタたち二人には、特別に条件付きでリュチア・シャルアロー救出作戦の参加を許可するわ」
 それはエリオットとレディが作戦への参加を希望して来るを踏まえての特別枠だという事を示唆(しさ)していた。
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2026-08-23

Dark Hunter / 第一幕〈21〉

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 ミーシアと別れた後、エリオットとレディは河原を存分に散策してからネジュアの街に戻り、仲介所に向かう途中で市場や店舗を見て回った。
 午前八時から九時を指す雷の刻は活気づき、河原へ出掛けた時間とは違って大きい通りに行き交う人の波が大都市らしさを見せていた。
 ウツボ通りに入ると一気に空気が変わり、厳(いか)つい装備に身を包んだ傭兵がまばらに歩いている。
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2026-08-15

Dark Hunter / 第一幕〈20〉

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「キリニウスく~ん?」
 聖騎士の鎧を着た、赤茶色の短いボブヘアーの筋肉質な女性がキリーの名を呼びながら向こうから駆け足でやって来る。

 キリーはその声に首だけ振り返り、彼女の姿を見るなり「げ」と声を上げ、気まずい表情を見せた。
「じゃ、じゃあ俺は持ち場に戻るから――」
 キリーはさり気なく逃げようと試みたようだが、想像以上に向かって来たその人物の足は速く、キリーは後ろから力強く首当てを引っ掴まれ、片足を上げたまま動きを止めた。
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2026-08-08

Dark Hunter / 第一幕〈19〉

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「よっ! 珍しいなエリオット。今日は朝から仕事をサボって可愛い子とデートかい?」
 河原を巡回する顔見知りの聖騎士がエリオットを見かけて声を掛けてきた。
「そんなわけないだろう。からかうなよ、キリー」

 水神殿所属の鮮やかな青の外套と白銀の鎧を身に着けた聖騎士キリニウス・ガーラント、こと、キリーはエリオットとは神学校の同期である。
 健康的な見た目の南国由来の淡い褐色(かっしょく)の肌と首の後ろで束ねられた肩まで伸びた金髪と頼りになりそうな背格好は白銀の鎧に映え、黙ってさえいれば聖騎士然(ぜん)として見えるのだが――
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2026-08-01

Dark Hunter / 第一幕〈18〉

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「緊急以外、仲介所の受付は雷の刻(八時)まで閉じているから、テテロトキスの河原に案内するよ」
「そうね。あたしも精霊術の使い手として、精霊の集まる場所には興味があるわ」
 さっきまでの険悪な空気が嘘だったかのようにエリオットの提案にレディはすんなりと頷き、二人は神殿の敷地を出て北門の方へ歩き出した。

 テテロトキスの河原はウェストワール山脈からアニアカデ海へ向かって流れるシーラ川の一端で、ネジュアから北に一キロメートルほど歩いた場所にある。
 テテロトキス、という名称はアミヤ語で「旅人の休息地」という意味を持ち、その由来は古来からこの付近に生息するローシエという希少な植物が魔力を吸収する特性から魔物を寄せ付けないため、人間や動物達にとって魔物の脅威のない安全地帯だった事からきている。
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2026-07-25

Dark Hunter / 第一幕〈17〉

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 神殿を出ると、レディは途端に態度を変えてエリオットに振り返り勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「――で。協力してくれる気になったのね?」

 そう言った彼女の目はまるで「昨日はあんなに否定的だったのに」とでも言いた気である。
「俺の考えは昨日と変わらないよ」
「……どういうことよ?」
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2026-07-18

Dark Hunter / 第一幕〈16〉

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 まだ人もまばらな食堂で朝食を終えた後、エリオットは礼拝堂へ向かった。
 神官達は朝の六時、炎の刻(こく)丁度に礼拝堂で朝礼を行い本日の業務を開始する。
 エリオットは普段、あまり熱心な神官とは言えず、朝礼が終わる頃合いを見計らって礼拝堂へ向かうのだが、今朝はレディにいち早く会うために朝礼の時間より早く礼拝堂に顔を出した。
 礼拝堂には既にサードとレディ、ドリスの三人がおり何やら話し合っていた様子だった。
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2026-07-11

Dark Hunter / 第一章〈15〉

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 青い窓掛けの間から眩い朝日が射し、エリオットは目を覚ました。
 眠たい目を擦りながら起き上がり、しばらく寝台にぼんやりと座る。
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2026-07-04

Dark Hunter / 第一幕〈14〉

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「ふむ……噂にある稀代の水鏡の巫女か」

 ゾウェインは目を細める。
「教団は巫女の未来視と探知の能力を利用するつもりなのでしょう。五年前の事もあります。放っておくのは危険だと判断致しました。どうかご指示を」
 五年前、と聞いてリヌは剣を磨いていた手を止め、ネイカーもその言葉に反応する。
カテゴリ:
2026-06-27

Dark Hunter / 第一幕〈13〉

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 黒のチューブトップと太ももまで見える体型にぴったりと沿った短いスカートを着こなした、大きな蝙蝠の翼を背に持つ黄緑の短髪の蠱惑(こわく)的な女性がすらりとした足先のハイヒールを小気味よく鳴らして城の中枢へ続く大理石の廊下を歩いて来る。
 彼女は魔竜軍の幹部の一人、レオナ・イカルノ。
 魔族メドゥーサの純血であるイカルノ家は代々ファズガルに仕えてきた血筋であり、彼女もまた代々そうであったように幹部の誰よりも魔竜軍に誇りを持ち、魔竜ファズガルを敬愛している。
カテゴリ:
2026-06-20

Dark Hunter / 第一幕〈12〉

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 およそ四百年前、ダイディヴィスの西の国境となるウェストワール山脈を隔てたスレフィシア砂漠の中央には、精霊人アロンシアの国アリューシア帝国があった。

 帝国は死の砂漠の只中にありながら、「精霊が生まれる場所」「始まりの樹」と称される天を穿(うが)つ巨大な精霊樹「リーンヴェル」の恩恵を受け、豊富な水源と緑に恵まれた地だったとされる。
カテゴリ:
2026-06-13

Dark Hunter / 第一幕〈11〉

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 「それでいいの? あんたは」

 レディは荒々しく音を立てて机に両手を付き、エリオットに問い掛ける。
 机の上の食器は跳ね上がり、エリオットは甲高い食器の音に驚いて顔を上げた。
「エリオット、あなただってファズガル教団に復讐したいんでしょ。それでいいのかって訊いてるの!」
カテゴリ:
2026-06-06

Dark Hunter / 第一幕〈10〉

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 レディは腕を組んで胸元を隠し、眉間に皺を寄せ「ほんっとに男って……」と愚痴る。
「ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ」
「そんなつもりって、どんなつもりよ。悪いと思うなら、責任取ってあたしに協力くらいしてもいいんじゃない?」
 レディはエリオットの負い目を好機と見てか、意地の悪い笑みを浮かべて自分の要求を通そうとする。
 この調子なら、どう転んでも思い通りにいくまで引き下がりそうにないと感じたエリオットは肩を落とし、妥協してレディの要求を呑(の)む事にした。
カテゴリ:
2026-05-30

Dark Hunter / 第一幕〈9〉

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 ドリスは「リュチア」という名前に反応して目を丸くし、少し興奮気味にレディに話し掛ける。
「まさか、あなたのお姉さんって水鏡の巫女のリュチア・シャルアローなの?」
 ドリスの驚いた表情に、レディは得意げに笑う。
カテゴリ:
2026-05-26

Dark Hunter / 第一幕〈8〉

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「改めて訊くけど、あんた、仲介所にいたわよね」

 せっかく夕食にありつこうという時にやって来て、再びよく知りもしない相手から「あんた」と言われ、気分を悪くしたエリオットは向かいに立つレディに対し不機嫌に首を傾げるように見上げた。
「あのなぁ。いくら何でも、初対面の相手にあんた、は失礼じゃないか? 俺はエリオット・エスロイ。君よりは年上だと思うけど?」
 レディはエリオットの説教が気に食わなかったのか、顔をしかめて腕を組んで訊いた。
カテゴリ:
2026-05-17

Dark Hunter / 第一幕〈7〉

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 エリオットは席に着く前に彼女の姿を見て、どこかで見覚えがある、と首を傾げてパンで隠れた顔を見ようとする。
 低い身長に長い亜麻色のくるくると丸まった毛先の髪、肩の出た神職らしくない、若者風に作り直された巫女装束……そう、傭兵仲介所で騒動の渦中にいた巫女の少女だ。
カテゴリ:
2026-05-11

Dark Hunter / 第一幕〈6〉

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 仲介所を出た後、真っ直ぐ大神殿の寮へと帰る。
 魔物から獲れた戦利品を全て引き取ってもらったため、幾分かは生臭さは軽くなったものの、時折鼻につく悪臭が気になって仕方なかった。
(熟練のダークハンターはこれが日常茶飯事なのか……)
 まだダークハンターとして日の浅いエリオットは悪臭に慣れなければいけないのだろうか、と不安に思いながら、自分の部屋に荷物を置いて箪笥(たんす)から着替えを取り出し、浴場へ行く準備をした。
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